2004 Fiscal Year Annual Research Report
分子凝集および液滴粉砕による分子ナノクラスターの気相合成とその物性解明
Project/Area Number |
14740332
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三井 正明 慶應義塾大学, 理工学部, 助手 (90333038)
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Keywords | ナノクラスター / 光電子分光 / 負イオン / 電子 / 結晶 / ポリアセン |
Research Abstract |
本年度、オリゴアセン、オリゴフェニレンなどの一連のπ電子系有機化合物で構成されるナノクラスター負イオンに対して光電子分光法によるサイズ選択的な電子構造の観測を系統的に行い、以下に述べるような成果を得た。 (1)ナフタレンやアントラセンなどのオリゴアセン化合物で構成されるナノメートルスケールの集合体(構成分子数が30個程度以上)に対して余剰電子を付着させると、余剰電子によって誘起される梼造緩和の程度が大きく異なる二つの安定状態が生成することを光電子分光法による電子構造の観測から初めて見出した。これら二つの安定状態の生成比に対する内部温度依存性やメチル基置換基効果を系統的に調べることによって、この現象が電子付着前の中性集合体における固体的状態と液体的状態の共存を反映したものであることを明らかにした。これはバルク結晶では見られないナノメートルスケールの集合体に特有の現象であり、極微小サイズの分子集合体の集合構造形態や電子構造に対してサイズや内部温度がどのような影響を与えるのかを初めて直接的に示したものである。 (2)ビフェニル、p-ターフェニルなどのオリゴフェニレン類のナノ集合体(2-100量体)では、オリゴアセン類とは異なり、固-液共存を反映した二つの安定負イオン状態の共存は確認されなかった。しかしながら、ビフェニルとp-ターフェニルナノクラスター負イオンに対して得られた光電子スペクトルの比較から、両者においてスペクトルの形状や幅、電子束縛エネルギーのサイズ依存性が大きく異なることが見出された。この結果は、ビフェニルでは液体的なクラスターに対する電子付着によって負イオン状態が形成されるのに対し、p-ターフェニルでは固体的クラスターに対する電子付着によって負イオン状態が生成していることを示しており、分子サイズと分子構造の異方性の増大によってナノ集合体の熱力学特性が大きく変化することを明らかにすることができた。
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Research Products
(7 results)