2002 Fiscal Year Annual Research Report
新規エクアトリアル位占拠型配位子を用いたシリカートの合成と有機合成反応への応用
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14740340
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 潤司 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (90334242)
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Keywords | 高配位ケイ素化合物 / 4座配位子 / トリアリールメタン / 分子内配位 / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
これまでの検討から2,2',2"の位置に3つのメトキシ基を有するトリアリールメタン(Ar_3CH)から容易に調製が可能であることが明らかとなっているAr_3CLiに対し、SiCl_4のようなケイ素試剤を反応させることにより、中心炭素上にケイ素原子の導入を検討した。種々条件を検討した結果、ベンゼン溶液中でAr_3CLiを発生させた後、テトラヒドロフランに溶媒交換し、添加剤としてHMPAを加えた後にSiCl_4と反応させることにより、12%という低収率ながら、中心炭素状にケイ素原子を導入したトリアリールメチルトリクロロシラン(Ar_3CSiCl_3,1)の合成に成功した。1の単結晶を作成し、X線結晶構造解析を行った結果、3つのメトキシ基が中心ケイ素原子に対して塩素原子のちょうど反対側に位置し、メトキシ基の酸素原子の孤立電子対がSi-Clの反結合性軌道と相互作用していることがわかった。また1の^<29>Si NMRを測定したところ、0.30ppmにシグナルを観測した。この値はメトキシ基の配位の影響がないPh_3CSiCl_3の3.4ppmに比べ、わずかに高磁場シフトしており、溶液中においても弱いながらO…Siの相互作用が存在することが示唆された。続いて、分子内配位の効果の反応性に対する影響を検討するため、各種求核試剤との反応を行った。加メタノール分解、n-BuLiとの反応、およびLiAlH_4との反応を行ったが、いずれの場合もまったく反応は進行せず、1が求核試剤に対して極めて高い安定性を有していることがわかった。これは、X線結晶構造解析の結果から示唆されたとおり、メトキシ基の酸素原子の孤立電子対が、σ^*_<Si-Cl>軌道に相互作用するとともに、求核試剤のケイ素原子への背面攻撃をメトキシ基が立体的に抑制した結果と考えられる。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Kobayashi, J., Ishida, K.; Kawashima, T.: "Synthesis of a Heptacoordinate Trichiorosilane with a Tetradentate Ligand and Unusual Stability for the Nucleophilic Substitution"Silicon Chemistry. (in press).