2002 Fiscal Year Annual Research Report
低温磁場中走査型トンネル顕微鏡による有機超伝導体の局所状態観察
Project/Area Number |
14740373
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
米山 直樹 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (80312643)
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Keywords | 有機超伝導体 / 走査型トンネル顕微鏡 / トンネル分光 |
Research Abstract |
1.有機超伝導体κ-(BEDT-TTF)_2X (X=C(NCS)_2,Cu[N(CN)_2]Br)の良質単結晶の育成において、Cu(NCS)_2塩ではSTM/STS測定に適した十分な大きさの良質試料が得られた。一方でCu[N(CN)_2]Br塩では巨大結晶育成は容易だが、同時に均一な良質表面を持つ試料を得ることが比較的困難であった。これを改善するため溶媒の高純度化と合成セル・電極表面の長時間超音波洗浄等を試みたが、試料表面状態の均一化・良質化には至らず、さらに継続的な合成条件探索が必要である。 2.Cu(NCS)_2塩の4.5Kにおける超高真空中STM測定により、ナノスケール以上にわたる広いドメイン的な構造が観測された。しかし現時点で超高真空中における明確な分子像の観察には成功していないことと相まって、この構造が何を示しているのかは不明である。室温大気圧中では容易に分子像を得ることが可能であるのに対し、真空度を上げていくにつれて分子像が判然としなくなる傾向がある。このようなas-grown試料表面STM像の雰囲気依存性の原因としては、使用している探針(機械研磨による白金イリジウム合金)と有機導体試料との相性が問題となっている可能性が考えられる。次にT_c以下の超伝導状態におけるSTS測定を通じ、微分コンダクタンスを求めた。4.5Kにおける微分コンダクタンスは特徴的な、コヒーレンスピークのないギャップ構造を持つ。T^*〜35-45K前後でのSTSの温度依存性でも、この温度近傍で擬ギャップ的な構造が出現し始め、超伝導スペクトルとともにほぼ過去の報告にある実験結果を再現した。本研究による新奇な結果として、まず4.5KでのSTS空間依存性を測定したところ、500Å程度に渡って均一な超伝導スペクトル構造が得られた。一方で常伝導状態の30K(<T^*)における同様の測定では微分コンダクタンスは大きな場所依存性を示した。これは超伝導直上の常伝導域における大きな空間的不均一性を観測している可能性がある。
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