2002 Fiscal Year Annual Research Report
超高速吸収変化スペクトル測定の高精度化と高機能な色素複合体光化学系への応用
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14740379
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
熊崎 茂一 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 助手 (40293401)
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Keywords | フェムト秒分光 / 光合成 / 電子移動 / 励起エネルギー移動 / 過渡吸収 / 時間分解蛍光分光 / 臭化銀 / 色素会合体 |
Research Abstract |
過渡吸収スペクトル測定装置自体の高精度化は次のように達成した。吸収変化を検出するための白色光の発生にあたっては800nmのレーザー基本波を使って、単一フィラメント状態の発生を達成し、安定化に成功した。また、励起光パルス列を5Hzから8Hz程度の周波数の光チョッパーで変調した。その光チョッパーの周波数の第二高調波で、光チョッパーに同期して白色光強度をフォトダイオードアレイから読み込んだ。こうすることで、過渡吸収測定のノイズレベルの低減に成功した。 この測定システムを、最近発見されたクロロフィルdからなる光化学系1色素タンパク複合体(Acaryochloris marina(A. marina)、光合成依存シアノバクテリアの一種)の研究に応用した。励起エネルギーの流れと電子移動の素過程を世界で初めて観測することに成功した。通常のクロロフィルaからなる光化学系1光化学系1色素タンパク複合体(ホウレンソウ由来)と比べると両者の差異は非常に大きかった。特に電子移動の素過程は他に例の無い様式で進行している可能性が大きいことがわかった。電子供与体クロロフィルの光酸化よりも見かけ上早く電荷分離が進行しているように見えるのである。この電子移動のメカニズムを解明することは今後の課題である。 銀塩写真の基礎光化学として重要な臭化銀上の色素会合体については、蛍光和周波生成時間分解法で、励起エネルギー移動と電子注入の両面にわたって理解を進めることができた。特に蛍光の偏光異方性の観測はこれまで知られていなかった励起エネルギーの素過程を顕在化させた。一方、蛍光を発する状態だけでなく、電子注入後の無蛍光性状態のダイナミクスがどうなっているのかは、ピコ秒以下の時間領域で十分な観察が為されておらず、これも継続して取り扱っていくべき問題点として残されている。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] S.Kumazaki, K.Abiko, I.Ikegami, M.Iwaki, S.Itoh: "Energy Equilibration and Primary Charge Separation in Chlorophyll d-Based Photosystem I Reaction Center Isolated from Acaryochloris marina"FEBS Letters. 530. 153-157 (2002)
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[Publications] S.Kumazaki, I.Ikegami, H.Furusawa, K.Yoshihara: "Energy Equilibration among the Chlorophylls in the Electron Transfer System of Photosystem I Reaction Center from Spinach"Journal of Physical Chemistry, A. (In press). (2003)
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[Publications] J.-W.Oh, S.Kumazaki, I.V.Rubtsov, T.Suzumoto, T.Tani, K.Yoshihara: "Ultrafast energy transfer in J-aggregate on AgBr microcrystals : its dependence on dye coverage"Chemical Physics Letters. 352. 357-362 (2002)
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[Publications] I.V.Rubtsov, K.Ebina, F.Satou, J.-W.Oh, S.Kumazaki, T.Suzumoto, T.Tani, K.Yoshihara: "Spectral Sensitization and Supersensitization of AgBr Nanocrystals Studied by Ultrafast Fluorescence Spectroscopy"Journal of Physical Chemistry, A. 106. 2795-2802 (2002)
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[Publications] 熊崎茂一: "光合成反応中心における電子励起エネルギーと電子の超高速移動過程"レーザー研究(レーザー学会機関紙). 31(3). 202-206 (2003)