2002 Fiscal Year Annual Research Report
植食性昆虫の寄主選好性の強さに見られる地理的変異と寄主植物のフェノロジーとの関係
Project/Area Number |
14740424
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Research Institution | Osaka Women's University |
Principal Investigator |
石原 道博 大阪女子大学, 理学部, 講師 (40315966)
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Keywords | 植物-昆虫相互作用 / 植食性昆虫 / 寄主選好性 / 地理的変異 / 自然選択 / ヤナギルリハムシ / ヤナギ / 季節変動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、寄主植物の質に見られる時間的変動の大きさが選択圧として、植食性昆虫の寄主選好性の強さに影響を及ぼしているかどうかを、ヤナギ類とその植食性昆虫であるヤナギルリハムシの系を用いて、主に個体群比較の方法によって検証することである。平成14年度は分布域の南方に位置する和歌山と滋賀で、(1)ヤナギルリハムシの生活環、(2)本種が利用しているヤナギの種類とフェノロジー、(3)各種ヤナギの葉の質に見られる季節的変化、(4)各種ヤナギにおける成虫数と産卵数の違いについて把握した。 その結果、ヤナギルリハムシは年3〜4化で、特定のヤナギ種に常に多く見られるということはなく、タチヤナギを除けばどのヤナギの種類にも見られ、各種ヤナギ間で見られる個体数の違いも季節によって変化した。また、どのヤナギでも葉の展開が春先に集中すること、葉の含水率および窒素含量が季節の進行とともに低下したことは、どのヤナギの葉の質も季節の進行とともに低下することを示した。しかしながら、これらのデータを詳細に検討すると、データの変化パターンに同調性はあるものの、ヤナギ間には違いがあり、その違いは季節によって異なった。すなわち、ある時期に質が他のヤナギより低いヤナギが、別な時期には他のヤナギより質が高いという現象が見られた。これは、ヤナギの質に見られる変動パターンが各種ヤナギごとに異なることを示唆する。おそらく和歌山と滋賀ではヤナギの質に見られる時間的変動が大きく、ヤナギルリハムシにとって最適なヤナギの種類が季節によって変化するために、特定なヤナギ種への選好性が進化しなかったと考えられる。平成15年度はヤナギの質に見られる時間的変動が小さいと考えられる北方の個体群で同様な調査を行う予定である。
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