2002 Fiscal Year Annual Research Report
新規ABA非感受性変異体slh1の表現型解析と原因遺伝子のクローニング
Project/Area Number |
14740449
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
能年 義輝 理化学研究所, 植物分子生物学研究室, 基礎科学特別研究員 (70332278)
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Keywords | 病原体抵抗性 / R-gene / 乾燥ストレス / 細胞死 / アブシジン酸 |
Research Abstract |
本年度は、乾燥に感受性を示すシロイヌナズナslh1 (sensitive to low humidety 1)変異体の詳細な表現型の解析を行った。slh1変異体はABAに非感受性を示すと報告したが、緑化を指標とした再実験の結果、感受性の異常には再現性が認められなかった。slh1の発芽に関しては、冷却処理(休眠を打破する)なしでも即座に発芽し、またABAを含む培地上でも野生型に比べて早いことから、休眠性の欠如は確かであった。葉身表皮細胞の微分干渉顕微鏡を用いた観察から、slh1変異体の土植え状態での矮小化は、細胞サイズの縮小に依るものであることがわかった。 土植え植物を用いたマイクロアレイ解析を行ったところ、slh1変異体で病原体抵抗性に関与する遺伝子の発現が変動している事がわかった。ノーザン解析の結果、slh1変異体では抵抗性関連遺伝子(PR1,PR2)、酸化的ストレス関連遺伝子(PRXc, GST)、プログラム細胞死関連遺伝子(SAG13)、R-geneシグナリング関連遺伝子(EDS1)といった過敏感反応のマーカー遺伝子の恒常的発現が認められた。さらに、トリパンブルー染色による死細胞、アニリンブルー染色によるカロースと自家蛍光物質の蓄積を検出した。これらの結果より、slh1は自発的に病原体抵抗性反応を起こす変異体であることが明らかとなった。細胞死変異体であるslh1が、乾燥耐性や種子休眠性を失っていることから、病原体抵抗性反応とストレス応答やABAシグナリングのクロストークの存在が予想された。 Ds挿入位置は5番染色体上のR-gene様遺伝子であり、原因遺伝子の特定を目指してDsを再転移させる事による復帰変異体の取得を試みたが得られなかった。cDNAの単離は成功したので、現在slh1変異体に導入し、表現型が回復するかどうかの相補実験を行っている。
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