2002 Fiscal Year Annual Research Report
カルシトニン細胞の分化形成を司る分子システムの同定とその遺伝子ネットワークの解析
Project/Area Number |
14740456
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鈴木 雅一 静岡大学, 理学部, 講師 (60280913)
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Keywords | カルシトニン / 転写因子 / ニジマス / Nkx2.1 / RT-PCR |
Research Abstract |
まず、ニジマスsCT前駆体をコードするcDNAの塩基配列を明らかにした。ニジマスsCTのアミノ酸配列は若干異なっており、sCT-I、sCT-IV、及びsCT-Vという3つのタイプに分けられた。sCT-VはsCT-IVの8番目のアミノ酸残基であるメチオニンがバリンに置換した新規のペプチドである。CT前駆体のアミノ酸配列に基づいて系統樹を作成した結果、ニジマスのCT遺伝子はsCT-IaとIb、及びsCT-IVとVが属する2つのグループに分かれると予想された。サケ科魚類の祖先魚でゲノムの倍数化が生じた際に、それに伴って重複したsCT遺伝子が次第に分岐して、上記の2つのグループが生じた可能性がある。一方sCT-IVと-Vに関しては、おそらく4倍体化の後に起こった遺伝子重複により生じたものと推察される。また、3種類のニジマスsCTのmRNAについてRT-PCR法により成魚での組織分布を解析したところ、いすれも鰓後腺において最も強く発現していることが示された。また、sCT mRNAは広範な組織において発現し、それぞれが異なる特徴的な組織分布を示した。CT受容体は広範な組織に分布していることが示唆されており、sCTは自己分泌もしくは傍分泌により局所的にも機能している可能性がある。そして、各CT遺伝子の5'上流領域には変異が生じており、特異的な発現パターンに繋がる特徴的な転写調節機構が存在している可能性がある。次に、ライブラリーから転写因子のクローニングを行い、ニジマスNKx2.ldのcDNAの塩基配列を決定した。Nkx2.1は哺乳類においてはCT遺伝子の発現を抑制するというモデルが考えられているが(Suzuki et al. 1998)、ニジマスのNKx2.1dはむしろ促進的に働く可能性があると推察された。さらに、ホールマウントin situハイブリダイゼーションによる解析で、Nkx2.1dはCTの遺伝子発現が始まる前の鰓後腺に現れる可能性も示された。
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