2002 Fiscal Year Annual Research Report
新しい多元系化合物半導体の物性解明と高効率薄膜太陽電池への応用
Project/Area Number |
14750015
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
田中 徹 佐賀大学, 理工学部, 助手 (20325591)
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Keywords | 薄膜太陽電池 / CZTS / 多元化合物 / 半導体 / スタナイト |
Research Abstract |
近年、地球温暖化や酸性雨など地球規模での環境問題の深刻化に伴い、クリーンで非枯渇な太陽エネルギーを利用した太陽光発電が期待されている。この実用化のためには、低コスト・高効率化に加えて資源が豊富で毒性の低い材料による太陽電池を開発する必要がある。スタナイト型結晶構造をもつCu_2ZnSnS_4(以下CZTSと略す)は、エネルギーギャップが1.45eVと太陽電池の最適値に近く、資源・毒性の点で有利であることから薄膜太陽電池用材料として有望視されている。これまでにドイツの研究グループより同時蒸着法を用いて作製したCZTS薄膜太陽電池において、2.3%の変換効率が報告されている。本研究ではCZTS薄膜の作製と物性評価を目的に、スパッタ法と蒸着法を組み合わせたハイブリッドスパッタ法によりCZTS薄膜を作製し、その特性を評価した。 作製した薄膜をX線回折により評価した結果、スタナイト構造のCZTSからの回折線が認められ、CZTS薄膜が得られていることが分かった。しかし、CZTS以外の異相からの回折線も検出された。このような異相の混在は他研究者の報告でもなされている。次に透過率測定により薄膜の光吸収係数を求めた結果、基礎吸収端以上のエネルギー領域において、10^4cm^<-1>の大きな光吸収係数が得られていることが分かった。このことから作製した薄膜は、薄膜太陽電池用として適していることが分かった。光吸収係数の2乗とフォトンエネルギーのプロットより禁制帯幅を見積もったところ、約1.42eVであることがわかり、これまでにCZTSで報告されている1.45eVとよく一致していた。この試料表面を走査型電子顕微鏡により観察した結果を、1μm以上の大きな粒径をもつ薄膜が得られていることが分かった。以上の結果より、本方法によりCZTS薄膜が作製可能であることが示され、その基礎特性を評価することが出来た。今後、さらに詳細な物性を評価し、薄膜太陽電池への応用を検討する。
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