Research Abstract |
本研究では,インバータ入力から誘導電動機の回転速度を推定し,速度制御を行う速度センサレス制御システムの開発を行っている。今年度の研究により,以下の成果が得られた。 1.本システムでは,インバータ入力から誘導電動機のトルクを演算し,このトルクとすべり角速度の関係を一次関数近似して,すべり角速度を推定する。これまでは,予備実験により一次関数を導出していたが,今年度,理論的にトルクとすべり角速度の関係式を導出した。誘導電動機の通常の動作領域では,すべりが小さいことから,誘導電動機の出力トルクの式を近似し,これを解くことで,すべり角速度を一次関数で表現することができた。実験で得られた一次係数が0.896であるのに対し,理論的に求めた係数は0.919となり,約2.5%の差はあるものの,理論式の妥当性が確認された。 2.トルクとすべり角速度は,一次関数で近似できるがその係数は周波数に依存して変化している。これまでは,各周波数における実験データから,最小二乗法により平均的な係数を求め,これを用いてすべり角速度を推定していた。しかし,一定の係数で推定を行うと,係数の変化により,すべり角速度の過補償や補償不足が生じる。特に,低周波となる低速領域においては,係数が大きく変化するため,著しいトルク不足となり,大きな速度制御誤差が生じていた。そこで,様々な周波数でトルクとすべりの関係式(一次関数)を求め,それぞれの式の係数を周波数に対する一次関数で表し,これをテーブル化して,周波数に応じて速度推定式を変更するようにした。その結果,低速領域においてもトルク不足が解消され,最大41rpmの速度制御誤差を22rpmまで低減することができた。
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