Research Abstract |
本研究の主な目的は鋼アーチ橋の耐震性能向上策の検討であり,そのためにまず,現行の終局ひずみ算定式の適用範囲を拡げ,アーチ橋のような地震時に大軸力が発生する構造形式への適用を図った.次に,上路式鋼アーチ橋を対象に,固有値解析,地震応答解析を行い,その振動特性を知るとともに,耐震性能評価を行った.その結果,得られた結論を以下にまとめる. (1)終局ひずみ算定式について:現行の終局ひずみ算定式は,軸力が大きくなると解析結果よりも非常に低めの値を示したので新たに提案式を作成した.新提案式は無補剛箱形断面,補剛箱形断面では解析結果は軸力が大きくなるにしたがって,板要素を用いた純圧縮の算定式に近づいている.無補剛箱形断面の提案式は現行式と比べ,少し低めの評価となっているが,これは軸力比が1.0において提案式の曲線を純圧縮の終局ひずみ算定式に近づくように作成したためである.パイプ断面の場合は,大軸力下で曲げモーメントが生じると,最大耐力を過ぎてからの強度低下が大きく純圧縮を受ける場合の変形能を下回ってしまう.よって軸力部材に新提案式を適用すると過小に評価してしまうため,純圧縮そのものの式を用いる必要がある. (2)固有値解析について:橋軸方向に振動する1次モードの固有周期は1.32秒であった.有効質量比は5次モードが最も大きく74%,1次モードが26%と,この二つのモードが卓越して現れていた.橋軸直角方向に振動する第1モードは2次モードであり,有効質量比も88%と高く,このモードが卓越していると考えられる. (3)地震応答解析について:橋軸方向に対する地震応答解析では部材の塑性化は補剛桁のみに現れたが,その最大ひずみは圧縮側で1.03εyと非常に小さく,また引張側も同様に1.2εyと小さな値で,橋軸方向の耐震性能は優れていることがわかった.橋軸直角方向地震応答解析では,アーチリブ基部と端柱基部に大きな軸力が発生した.アーチリブ基部は支承がビボット支承のため曲げモーメントを受けず,塑性化は生じなかったが,端柱基部はピン支承で橋軸直角方向の回転は拘束していたので,大きな曲げモーメントがかかり,外側のフランジにおいて終局ひずみに達した.橋軸直角方向地震応答解析から,端柱基部では外側フランジの応答ひずみに比べ,内側フランジの応答ひずみは非常に小さくなる. 次年度は耐震向上策を重点的に検討する.板厚を厚くしたケースや対傾構に替えて,座屈拘束ブレースを取り付けたケースの解析を行う予定である.
|