Research Abstract |
本年度は,履歴型の制震ダンパーの一つである座屈拘束ブレース(BRB)による鋼アーチ橋の橋軸直角方向の耐震性能向上を検討した.BRB設置前の鋼アーチ橋の橋軸直角方向の地震応答解析(地震動は,JR鷹取駅スペクトル適合地震波EW成分)で大きな応答塑性ひずみが生じた主構造は,端柱基部およびアーチリブ基部であったので,それらの損傷を軽減するため,a)端柱対傾構にBRBを設置したモデル(端柱モデル),b)端柱対傾構と下横構の一部にBRBを設置したモデル(下横構・端柱モデル)の2モデルを考え,動的複合非線形解析を実施して,元の構造物(基本モデル)の応答との比較によってBRB設置の効果を調べた.さらに,他の地震波に対しても同様な効果があるかどうかを検討した.本研究で得られた結論を要約すると,以下のようである. 1.固有周期は,橋軸方向に振動するモードでは変化が見られなかったが,橋軸直角方向の振動周期が多少長周期化している.これは,BRBの断面積が,元の構造物の該当部材の断面積の1/3〜2/3程度で,アーチ橋の橋軸直角方向の剛性が多少減少したためである. 2.端柱モデルでは,端柱基部の最大発生軸力は,基本モデルでの降伏軸力に近い値から0.5Nyと半分近くに小さくなった. 3.基本モデルでは,端柱基部に非常に大きな軸ひずみ(29εy)が発生し,安全性照査を満足しなかったが,端柱モデルおよび下横構・端柱モデルでは,それぞれ2.8εyおよび1.4εy程度に減少し,安全性照査を満足した. 4.端柱モデルでは,アーチリブの応答軸力および応答ひずみを減少させることができなかったが,下横構・端柱モデルではアーチリブ基部の軸力を半分近くに抑えることができ,また応答ひずみも弾性域にとどまるまで減少させることが出来た. 5.BRBに発生する軸ひずみの最大値は高々8εy程度であり,BRBの長さが部材長の半分であるとして2倍の軸ひずみを仮定しても,BRBの軸方向ひずみの限界値(20εy)に対して十分余裕があった.また,低サイクル疲労に対する照査(式(2))も満足した. 6.JRT-EW-Mの地震波以外に,タイプ1とタイプ2,I種地盤とII種地盤の各地震波に対して同様な検討を行った結果,地震波特性によるばらつきがあるものの,本研究で示した耐震性向上モデルの有効性を確認できた.
|