2002 Fiscal Year Annual Research Report
汽水域における生態系保全と水産業に配慮した河口処理法の最適化の研究
Project/Area Number |
14750424
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清野 聡子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (80251320)
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Keywords | 汽水域 / 河口 / 河口処理 / 水産業 / 絶滅危惧生物 / カブトガニ / 土砂管理 / 環境管理 |
Research Abstract |
汽水域の環境保全と漁業の両立の問題は、有明海再生の議論が2002年に進み、各地でも同様の現象がみられることがわかり社会的にも重要性が高まってきた。今年度は八坂川、山国川、番匠川、筑後川、吉野川、筑後川、江戸川、笠岡湾流入河川の汽水・河口域の物理、地形、漁業特性の情報を収集し、解析を行った。これらは日本国内で開発段階が異なるために、個別性と一般性を整理すれば、比較論が可能であると判断した河川である。改変の激しい江戸川河口では、埋立と土砂掘削により波と流れの場が大きく変化し、河口デルタ周辺の流れの連続性が分断されたことがわかった。漁業者の環境認識調査では、番匠川では、既存データから河口砂州周辺の掘削や利水問題が環境に影響している可能性があり、ヒアリングを行った。河口域でアサリ資源と藻場の回復がみられたが漁業者が資源管理への取組みが困難であることがわかった。いずれの調査地でも、漁業の産業としての部分は自然科学的アプローチがしにくいが、地域の海域情報の提供という点では漁業者から多くを学ぶことができた。公的機関のデータは、環境上の解析には測量精度が不十分であるが、個人研究で計測するよりも大量の情報なので活用する意義が確認された。特に、漁業的には河口域の微地形が重要であるが、これは従来の深浅図などでは検出しにくい情報である。空中写真は場の面的把握が便利なので、各種データを組み合わせて3次元海底地形図を作成し、写真とヒアリングにより検証するという方法論が効果的であることがわかった。河口処理については、カブトガニや絶滅危惧種の貝類などの稀少生物や、漁業種のためにも、過剰な掘削は悪影響を及ぼす恐れがあることが示された。とくにカブトガニについては、中小河川での小規模な連続的な砂州掘削は産卵地自体の喪失を招くので、河口処理法の見直しが急務であることがわかった。
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Research Products
(1 results)