2003 Fiscal Year Annual Research Report
交通行動における人間のサービス水準弁別閾値の計測と便益算定への影響分析
Project/Area Number |
14750442
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 浩徳 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (70272359)
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Keywords | 最小知覚差(MPD) / 都市鉄道経路選択 / 交通需要分析 |
Research Abstract |
現在,各種交通行動分析においては,ランダム効用を仮定し,個人の効用最大化行動を明示的に取り扱った非集計型の交通行動モデルが,多く用いられている.我が国の実務においても,交通選択行動(例えば,交通機関選択や経路選択)を分析する際には,非集計ロジットモデル(MNL モデル)が適用されることが多い.ところで,MNLモデルにおいては,個人の選択行動(選択確率)は選択肢間の効用差により決定される.そして,モデルの特性上,いかなる極小の効用差であっても,個人の選択確率は必ず変化するという仮定が置かれている.ところが,実際の人間の交通行動を観察すると,効用差が極小である場合には,それを正しく知覚し,反応することは極めて困難と考えられる場合が少なくない. そこで,今年度は,交通経路選択行動を対象として,行動の違いを生じさせる最小の効用差がどの程度なのかを計測し,それが交通需要分析に与える影響を実証的に分析した.具体的には,人間の交通サービスに対する効用無差別と判断する最小知覚差(MPD)を,東京圏の都市鉄道における通勤目的の利用者選択行動で実証的に測定し,それが交通需要分析に与える影響を分析した.その結果,MPDとして乗車時間換算で約76秒に相当する結果が得られた.また,複々線化による改良事業を対象に,MPDを考慮した時(MPDモデル適用時)と考慮しない時(MNLモデル適用時)との推計される需要を比較した.その結果,効用が同レベルの代替経路が存在するときにはMNLモデルはMPDモデルよりも大きめの需要を推計すること,プロジェクト実施等によるサービス水準の変化については,逆にMPDモデルの方がMNLモデルよりも大きめに変化分を推計する可能性があること,ただしこれらの差は高々1〜2%との結果が得られた.
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