2003 Fiscal Year Annual Research Report
コメットアッセイを用いた都市水環境中のDNA損傷性の動態解析
Project/Area Number |
14750457
|
Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
島崎 大 国立保健医療科学院, 水道工学部, 研究員 (60322046)
|
Keywords | DNA損傷 / コメットアッセィ / 都市河川 / 多摩川 / 代謝活性 / 下水処理水 |
Research Abstract |
多摩川中流域の本流および支流を対象として、コメットアッセイによりDNA損傷性の消長につき調査を行った。多摩川本流の3地点(羽村堰、日野橋、関戸橋)および支流である浅川の1地点(高幡橋)より河川水試料を各2000mL採取し、Sep-pak CSP-800樹脂(Waters製)を用いた固相抽出法により濃縮し、体積比で1000倍濃縮に相当する試料を得た。またMilli-Q水を同様に操作して陰性対照とした。濃縮試料40μLを対数増殖期にあるヒトBリンパ球由来WIL2-NS細胞株(ヒューマンサイエンス研究資源バンクより分譲、JCRB番号:JCRB9063)の培養液1.0mLと混和し、代謝活性化を行う系ではさらにS9mixを0.2mL添加した上、CO2インキュベータ内で2時間静置して接触させた後コメットアッセイに供した。 多摩川の支流である浅川の高幡橋から採取した試料のみ、陰性対照との差は認められなかったが、多摩川本流の羽村堰、日野橋、関戸橋から採取した試料については陽性と判定される有意なDNA損傷が観察された。調査地点のなかで最下流に位置する関戸橋から強いDNA損傷の発現が確認されており、当該の流域においてDNA損傷性を持つ物質群が河川水中に存在していることが示された。またこれらはS9mixによる代謝活性化を受けなくとも損傷性を発現する直接変異原によって構成されることが示唆された。多摩川では流域に位置する下水処理場から河川中に処理水が放流され、下流ほど河川流量に占める下水処理水の割合が増大する傾向が見られている。 特に日野橋から関戸橋の間には複数の下水処理場が存在しており、DNA損傷性に寄与する物質群の流入源の一つとして考えられる。この他、流域の道路路面排水、生活雑排水、工場排水なども流入源として想定される。
|