2002 Fiscal Year Annual Research Report
有明海沿岸低平地における居住類型とその居住空間システムに関する研究
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14750510
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
後藤 隆太郎 佐賀大学, 理工学部, 助手 (00284612)
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Keywords | 低平地 / 居住地類型 / 空間単位 / 水路 / 集合の仕組み / 有明海沿岸 |
Research Abstract |
本研究で取り上げる有明海沿岸低平地は、城下町都市を起源とする市街地、かつての田園地域に進展した市街地、その周辺のクリーク集落や散居村などの様々な居住タイプが存在する。本研究はそれぞれの居住空間の実態調査とその比較分析を行うことで、多様な計画システムとこれらの共通原理の解明を目的とするものであり、予定する2年間の研究計画のうち、以下に初年度の実績概要を示す。 1)都市空間(旧城下町)の水路網に着目した居住空間システムについて 城下町都市佐賀における都市と水路の関係に着目し、佐賀市における水路空間に関する実態調査から以下などを明らかにすることができた。(1)沖積低平地に立地する佐賀における水路の存在は、その形成と発展に欠かせない空間的な基礎といえるものである。(2)旧城下町の水路は、水路-道路の交互の繰り返しとして、基本的に変化することなく都市の中に刷り込まれている。(3)水路と居住との関係について、共同空間や外部との接触空間を生じる「外に向く水路」と、居住の単位をその奥にあって支える「内に向く水路」をみとめることができる。(4)水路の見え方については、線的なものと点的なものがみいだされ、旧城下町では特に橋からなどの後者の見え方が特徴的といえる。 2)田園改変居住地の空間システムについて 佐賀市の市街地は近世城下町を基盤とし、その周縁部分はかつてのクリーク集落や農地であった部分を取り込みながらゆるやかに拡大してきた。そこで、近年に市街化した地区を対象としてその空間変遷について調査を行った。その結果、クリーク集落や農地にあった水路を基本的に継承し、おおむね水路で囲まれた小規模な単位ごとに順次開発を積み重ねる市街地形成の様態が明らかになった。今後は小規模な開発単位の実態やそれぞれの単位間の関係に着目し、居住空間の形成の仕組みを明らかにしたい。 3)田園地域の空間システムについて 佐賀市周辺の田園地域において、水路に囲まれた集居タイプ(クリーク集落)の空間実態の調査をおこなった。対象地においても、水路の囲まれ方の形態的差異から単環型、重環型、集環型、ひだ型などに区分でき、それらの立地傾向が明らかになった。また、これら居住地形憩の差異はあるものの、いずれも共通して道-屋敷地-水路を単位としてそれらが集合したものであることが指摘できる。 以上、1)は現在論文投稿中であり、2)、3)についてもさらに調査分析を加え適切なかたちでの発表を行いたい。
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