2002 Fiscal Year Annual Research Report
中世の顕密仏教とその建築空間―浄土教建築の位置付けをめぐって―
Project/Area Number |
14750536
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
冨島 義幸 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教授 (80319037)
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Keywords | 中世 / 顕密仏教 / 浄土教 / 阿弥陀堂 |
Research Abstract |
当年度は、主として(1)浄土教建築の実態をとらえるべく、阿弥陀堂・常行堂を中心に史料の収集・分析を行うとともに、(2)その位置づけの基盤となる中世顕密仏教の建築空間を、領域・時代いずれのうえでもより広くとらえるべく、南北朝から室町初期における顕密仏教の建築空間について研究をおこなった。それぞれの研究で得られた主な成果は、以下のとおりである。 (1)阿弥陀堂の建立と教団-これまで平安後期の浄土教建築隆盛は、平安初期から中期に体系化された天台浄土教学をもって描かれてきたが、平安後期の真言教団には新たな展開が認められる。平安後期の阿弥陀堂の造菅過程、供養会や法会の空間を分析することで、阿弥陀堂の建立、そこでの法会活動において、真言教団が深く関わっていたことを明らかにした。平安後期に阿弥陀堂造営が隆盛した背景には、天台教団の活躍だけではなく、院と真言密教の密接な関わりがあったことが明らかになりつつある。現在、その成果を学術論文として投稿・発表する準備をおこなっている。 (2)室町幕府の顕密仏事とその建築・空間-中世顕密仏教の建築空間のより広い像をつかむべく、室町時代における顕密仏教の空間の研究を開始している。すでに禅院たる相国寺での七重塔供養会の,空問に、院政期の顕密仏教の建築空問に特徴的な構成が継承されていたことを明らかにしたが、それに続き、平安浄土信仰からの流れととらえられる武家の法華八講に注目し、対象とする時代を尊氏期から義満期に広げ、その会場となった建築およびその空間を具体的に明らかにした。また、そこでおこなわれた顕密仏事空間の実態を検討し、それが僧団の自立的な教学活動の結果生まれたものではなく、むしろ「法会の空間装置」と評される院政期御願寺と近いものであったことを明らかにした。本研究の成果は、まもなく学術論文として投稿するところである。
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