2002 Fiscal Year Annual Research Report
セーヌ県知事オスマンの街路開設事業におけるパリ市歴史中心地区での土地収用と再開発
Project/Area Number |
14750537
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
松本 裕 大阪産業大学, 工学部, 講師 (20268246)
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Keywords | 都市組織 / セーヌ県知事バロン・オスマン / パリ / レオミュール通り / ファサード・コンクール / ポスト・オスマン / 土地収用 / 都市再開発 |
Research Abstract |
本研究では、パリ市歴史中心地区にあたる第I区と第II区を対象として、そこで実施されたオスマンの街路開設事業の実例をおもに「土地収用(expropriation)」と「土地区画分譲(lotissement)」の二側面に沿って実証的に解明する。平成14年度は、レオミュール通り(rue Reaumur)という一本の街路開設事業を取上げた。レオミュール通りは、セーヌ川と平行に東西の主要なサーキュレーションの実現を目的としてオスマンにより計画された街路の一つであり、1864年に政令が発せられた。しかしながら、この通りが完全に貫通開設したのはオスマン退任後のポスト・オスマン期で、政令公布から30年経った1894年であった。この間、レオミュール通りは三つの部分に分けて別々の時期に開設されたため、オスマン以前の町並みとオスマン在任期とポスト-オスマン期が混在している状態を地割組織図に表した。その結果、レオミュール通りと既存の地割とによって形成された三角形状敷地の形成が特徴的であることが判った。そうした角地には、敷地コーナーに円筒を配したものや鉄やガラスなど新しい素材を用いたアパルトマンが建設された。こうしたアパルトマンでは、オスマン型の画一化された都市景観からの脱却を目指すポスト-オスマン期の万国博やベルエポックといった華やかな時代にふさわしい都市景観に寄与した。パリ市による初めての「ファサード・コンクール(Concours des facades)」がこうした傾向を加速させたことも明らかとなった。これらの史実は、主として、パリ市議会議事録、街路開設許可申請書類一式/AP Vo11といった一次資料に基づき解明した。初年度に得られた成果は、オスマン研究の大家であるピエール・ピノン教授の指導のもとパリ建築大学ベルビル校にDEA論文として提出した。
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