2004 Fiscal Year Annual Research Report
南米ブラジル日系移民の住空間における文化的側面から見た変遷要因に関する研究
Project/Area Number |
14750538
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Research Institution | Miyagi National College of Technology |
Principal Investigator |
熊谷 広子 宮城工業高等専門学校, 助手 (10300518)
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Keywords | ブラジル / 戦前期 / 日系移民 / 家族観 / 住居観 / 建設指針 / 変化 |
Research Abstract |
サンタ・カタリーナ州ラモス移住地での現地実測調査により、日系家族22世帯中17世帯、ブラジル人家族12世帯中4世帯の住居平面を作成することができた。建築年代及び材料別にみると、年を追って次第に木造家屋から煉瓦家屋へと移行して行くのがわかる。サンタ・カタリーナ州にはドイツ系移民が多く居住し木造家屋も多く見られるが、ラモス移住地のこの家屋の変化はサンパウロ州の日系家屋一般の変化傾向と同様にある。 本研究の主たる目的であった戦前期における日系移民の家族観・住宅観の変化については、次のように考えられる。当初、移住者たちはブラジルでの生活は一時的なもので、家族・祖先は日本にありブラジルでの住居は仮の宿と考えていた。しかし、その考えは1920〜30年代の日本側の移住政策やブラジルでの彼等の経済的問題が大きく関わって変化し、次第に現地での生活に目が向けられるようになっていった。1920年代後半から1930年代前半には新聞・雑誌上において、ブラジルに定着して立派な町や住居を築いている他系移民を模範としようとする投書や、子供の教育や生活面での精神的ゆとりを説く動きがみられており、また同時期に同仁会やブラ拓などの組織によってつくられた住宅建設上の指針の存在も明らかとなった。 さて、特に建築学的に問題となるのは、この家族観・住居観の変化が実際の住宅建設にどのように影響を与えたかということである。これに関しては今回の研究の中でサンパウロ州の2つの移住地を取り上げ検討を試みた(平成16年日本建築学会東北支部研究報告会、平成17年同報告会)。しかし、このことをブラジルにおける日系移民全体の問題として検討するにはさらなる史料の収集が必要であるため、今後の研究課題として新たに取り上げたいと考える。
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Research Products
(1 results)