2004 Fiscal Year Annual Research Report
スピノーダル分解を用いた新規ルチル型機能性酸化物の作製
Project/Area Number |
14750549
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村岡 祐治 東京大学, 物性研究所, 助手 (10323635)
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Keywords | 遷移金属酸化物 / 薄膜 / 光 / ヘテロ接合 / 超伝導 |
Research Abstract |
一昨年我々はn型チタン酸化物基板とp型の遷移金属酸化物薄膜からなるpnヘテロ接合において、紫外線照射により薄膜に効率よく光キャリアが注入されることを見出した。これは紫外線照射により基板で生成されたホール-電子対のうち、ホールのみが選択的に薄膜に注入されるというものである。これまでにVO_2/TiO_2:Nbヘテロ構造において光キャリア注入により絶縁体のVO_2が金属化したことを示唆する結果を得ている。この手法により物性制御が期待できるため、他の遷移金属酸化物への適用に興味がもたれる。今年度は光キャリア注入法をp型の高温銅酸化物超伝導体YBa_2Cu_3O_<7-x>(以下YBCOと記す)とn型のSrTiO_3基板からなるヘテロ構造に適用してみた。その結果、YBCO薄膜の超伝導転移温度T_cを5K上昇させることに成功した。薄膜に注入される光キャリア量の最大値は主に空乏層の静電容量により決定される。静電容量は温度の減少と共に小さくなった。30Kでの光キャリア注入量は表面電荷量にして10^<13>cm^<-2>程度であると見積もられた。この注入正孔は界面付近の狭い範囲に存在していると考えられる。光キャリア注入量の増大を目指し、低温で量子常誘電性を示すSrTiO_3絶縁体を基板に用いてみたが、光キャリア注入の効果に向上は見られなかった。一方、光キャリア注入時に生じる起電力の様子を光電子分光により観測することが出来た。共同研究により成功を収めることが出来たよい例となった。今後研究を続けることにより光キャリア注入法による広範囲で能動的にキャリア数が制御できるようになると、この手法はデバイスへ応用できるであろう。例えば、光スイッチ、光センサー、太陽電池、超伝導デバイスへの応用が期待される。またモット絶縁体とバンド絶縁体の良質なヘテロ接合が作製できると、通常の半導体接合には見られない強い電子相関が効いた、何らかの新しい現象が見出されるのではないかという期待も持たれる。
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Research Products
(6 results)