2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14750566
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Research Institution | Osaka Prefectural College of Technology |
Principal Investigator |
君家 直之 大阪府立工業高等専門学校, 機械工学科, 講師 (60332037)
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Keywords | 炭素繊維 / 力学的特性 / 圧縮 / 強度 / 弾性率 / 破壊 / 構造 / 結晶 |
Research Abstract |
ナノオーダーの位置決めを可能とするピエゾステージと微小荷重測定用ロードセルを用いて、より測定精度の高い圧縮試験装置を製作した。ピエゾステージは粗動の位置決めを行うためのXYマイクロメータステージの上に配置し、さらにコンピュータからフィードバック制御を行いながらピエゾステージを微動位置決めさせる構造とした。ピエゾステージ上には任意の角度調節ができる試料台を取り付け、その上に固定した繊維試料の配向を調整しながら繊維軸方向に静的に圧縮できるようにした。試料に加わった圧縮荷重はロードセルにより検出し、その信号の変化を高応答シグナルコンデイショナで増幅後A/D変換し、ポータブルデータ収集装置にて逐次記録した。この試験装置を用いることにより試料の位置決めの再現性が得られ、炭素繊維の軸方向圧縮強度の測定に加えて、これまで困難であった炭素繊維の軸方向圧縮ひずみおよび圧縮弾性率の直接測定が可能となった。 試験環境の改善後、各種PAN系炭素繊維について圧縮試験を行い、さらにX線回折試験とSEM観察による構造解析をあわせて行うことにより、軸方向圧縮特性と繊維の結晶構造との関係を明らかにした。その結果、炭素繊維の圧縮特性には黒鉛化処理時に生じる繊維表層付近の黒鉛結晶と気孔の存在とが密接に関係していることが確認できた。そこで繊維の黒鉛化処理温度を抑え、結晶不規則領域を適度に含む繊維について圧縮特性を評価したところ、高温で黒鉛化処理した繊維よりも圧縮特性が向上することが確認された。またこのような繊維では、引張特性と圧縮特性の差異が軽減されることも明らかとなった。したがって炭素繊維の圧縮特性改善にあたっては、引張特性とのバランスを考慮した上で、黒鉛結晶層と結晶不規則領域の比率および分布状態を最適化することが重要であることがわかった。
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