2003 Fiscal Year Annual Research Report
不活性ガスが活性金属の疲労き裂伝播挙動に影響を与えるメカニズムの解明
Project/Area Number |
14750572
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
下条 雅幸 東京工業大学, 精密工学研究所, 助手 (00242313)
|
Keywords | 金属 / 疲労き裂伝播 / 気体環境 / 不活性ガス / 結晶構造 / 真空 |
Research Abstract |
一般に酸素など活性な気体を含む環境中での金属材料の疲労き裂伝播速度は、真空中と比較して、高いことが知られている。希ガスなど不活性な気体は、一般に鉄鋼材料などにおいて疲労き裂進展に影響を与えない、すなわち真空中での疲労き裂進展挙動と同じ挙動を示すと言われてきた。しかし申請者は、純Tiにおいて、希ガス中での疲労き裂進展速度が真空中の場合と比較して高いこと、破面形態が異なること、および希ガスがTiの繰返し塑性域内に侵入することを明らかにしている。これは従来の疲労き裂伝播に対する環境気体の吸着メカニズムでは説明できない。この原因としては、Tiが化学的活性の高い金属であること、あるいは、結晶構造がHCP構造であることなどが考えられた。BCC構造のβ-Ti合金およびHcP+BCC構造の(α+β)-Ti合金を用いた昨年度の研究から、この原因がTiの活性ではなく、HCP構造に関連していることが示唆された。 そこで本研究では、希ガスのような非常に不活性な気体がHCP金属の疲労き裂伝播に影響を与えるという仮説に対して一般性を調べることを目的とし、活性の高いTi以外の合金を用いて、大気中、希ガス中および真空中で疲労き裂伝播試験を行った。 その結果、FCC構造を持ち化学的活性の高い7075Al合金では、希ガス中および真空中での疲労き裂伝播速度には優位な差は見られなかった。しかし、HCP構造を持つ純Zrにおいては、希ガス中の疲労き裂伝播速度は、真空中の値よりも大きく、大気中の値とほぼ同じであった。以上のことから、真空中に比べて希ガス中で疲労き裂伝播速度が大きくなる原因は、化学的活性ではなく、HCP構造に関連していることが明らかとなった。
|
Research Products
(1 results)