2003 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ多層膜を用いた表面コーティングによる疲労き裂核形成の抑制
Project/Area Number |
14750578
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
兼子 佳久 大阪市立大学, 大学院・工学研究科, 講師 (40283098)
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Keywords | ナノ構造材料 / 多層膜 / 電気めっき / 機械的特性 |
Research Abstract |
銅多結晶基盤上にNi/Cuナノ多層膜を電気めっき法により作製し,その硬度や変形・破壊特性を調査した.NiとCuはイオン化傾向が大きく異なるので,それらのイオンを含む電解液中で基盤にカソード電位を与えると,電位に依存して析出する金属が異なることをEDS分析でまず確認した.2種類の電位を交互に矩形波的に与えることにより,Ni層とCu層からなる多層膜を形成することができた.矩形波の時間幅を短くすることにより,個々の層厚さをナノメーターレベルに減少させることができた.まず,NiとCu層の厚さの比率を1:1に固定し個々の層厚さを変化させた多層膜を用いてビッカース硬さ試験をおこなった.層厚さを減少させていくとHall-Petchの法則にしたがい硬度が増加した.層厚さが10nmでは基盤の硬度の約3倍になった.さらに層厚さを減少させると急激に硬度は減少することが判明した.次に個々の層間隔は5nm,20nmおよび100nmの3種類のナノ多層膜を銅基盤にコーティングしたものを基盤ごと引張変形させた.基盤の塑性ひずみが約3%以下ではどの多層膜にもすべり変形や破壊は認められなかった.塑性ひずみが約6%以上になると,層間隔に依存して挙動が変化した.20nmと100nmの多層膜にはき裂が形成されたがすべり変形はほとんど見られなかった.しかし5nmの多層膜にはき裂は形成されず,かわりに基盤から伝達したすべり線が多く観察された.硬さ試験や引張試験の結果,10nm程度までの層厚さの多層膜は強度が非常に高いことが判明したが,それ以下の層厚さの多層膜では急激に強度低下してしまった.よって,10〜20nm程度のナノ多層膜をコーティングすることによって疲労や摩耗特性の増加が期待できる.
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