Research Abstract |
ステンレス鋼の製造では,転炉処理で多量に発生する含Crダスト及びスラグの低減化,再資源化が実施されているが、Crが十分に回収されているとは言い難い.従って,Crの回収率の向上のためには酸化鉄共存下でのCr_2O_3の還元挙動を解明することは重要であり,実操業及び学問両面からもその解明が強く望まれている.本研究では,ステンレス精錬ダスト処理法の開発を目的に,実操業ダストを用いて,還元挙動に及ぼすダスト組成,炭材量,温度,炉内雰囲気の影響を調べ,Crを再資源化する際の最適条件について検討を行った.得られた結果は以下の通りである. M.Fe濃度が高いダストに関しては,試料を黒鉛るつぼに入れ,1300℃以上の高温で加熱処理を行うことにより,短時間で,金属相とCr, Feを含まないスラグ相に溶融分離でき,スラグを含まない金属Fe-Cr-C合金が得られることがわかった. FeO, Fe_2O_3濃度が高いダストに関しては,作製した炭材内装ペレットをN_2雰囲気中で加熱処理した結果,1200℃,1100℃の還元率曲線は直線的であるのに対して,1000℃の場合には反応後期に還元率曲線の勾配が小さくなり,還元速度が遅くなる傾向が見られたが,炭材量及び温度の影響は大きく,炭材量が多く,高温ほど還元速度は速くなることがわかった.しかし,過剰に炭材が存在する場合でも,各温度で100%の還元率を得ることはできなかった.熱力学平衡関係から,CrよりもFeの方が還元され易く,酸化鉄の還元が優先的に進行した後に,Cr_2O_3の還元が進行すると考えられるが,今回の還元条件ではCr_2O_3の還元は起こりにくく,ダスト中には未還元のCrが酸化物の状態で多量に残留していることがX線回折及びEPMA分析により確認された.よって,100%の還元には,さらに高温でCrの還元を促進する必要があるが,上記の方法で酸化鉄を還元してCrの含有割合を高めた試料は,溶銑と反応させることによりCrは容易に回収されると考えられる.
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