2003 Fiscal Year Annual Research Report
同種金属二核錯体システムの色彩特性を利用する微量指標金属種の目視閾値判定法の開発
Project/Area Number |
14750643
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
水口 仁志 山形大学, 工学部・物質化学工学科, 助手 (30333991)
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Keywords | 目視分析 / 簡易計測 / 閾値判定 / 微量金属イオン / 同種金属二核錯体 / 環境計測 |
Research Abstract |
本研究は,水試料中の微量金属イオン濃度が基準値以上か以下かを明確な色の違いで判断する手法の開発を目的とした。この方法は,一つの分子に二個の金属イオンが結合できるタイプの有機試薬と金属イオンとの錯形成反応における,モル比([M]_T/[L]_T)1〜2の狭い濃度範囲で金属錯体の存在分率が急激に変化する平衡特性を利用するものであって,単色の濃淡に基づく古典的な比色法とは異なり原理的に全く新しいものである。溶液の色が急激に変化する金属イオン濃度領域は試薬濃度だけで設定することができるため,環境基準をはじめとする様々な法規や経験的な指針値に合わせたスクリーニング法としての応用が期待できる。 本年度は,微細化したイオン交換樹脂への吸着および減圧濾過によるフィルター濃縮による本法の高感度化・高性能化について検討した。メンブランフィルターを用いて鉄(III)-XOの発色システムにおいて適用したところ,遊離のXO,1:1錯体は効率よく濃縮されることが分かった。2:1錯体は,フィルターの種類によって濃縮効率が変わり,親水性PTFEタイプのメンブランフィルターまたはガラス繊維濾紙を使用したとき効率よく濃縮された。また,これらの錯体化学種が濃縮される際,吸収スペクトルが長波長側へシフトして,目視閾値判定法として有効な色彩変化をもたらすことが分かった。本研究で提案する方法では,モル比([M]_T/[L]_T)1と2の間での上記の平衡特性が溶液の色として反映されていることが必要不可欠であり,この間の色の違いが大きいほど目視による閾値判定の精度が向上する。結果として,微細化したイオン交換樹脂を用いる方法が本法の高感度化だけでなく,スペクトルシフトによる高精度化によって,ppbレベルでの鉄イオンの目視閾値判定を実現した。
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