2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14750683
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森内 敏之 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (60281119)
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Keywords | ペプチド鎖 / フェロセン / 不斉構造規制 / 水素結合 / 結晶構造 / 錯形成 / 不斉反応場 |
Research Abstract |
生体内に見られるような機能的な反応場構築において反応場の機能を考慮した配位子設計が重要であると考えられる。本研究では、生化学と有機化学との境界領域の方法論を展開することにより、本来の機能物質の機能を越えた、または全く別の機能を有する動的分子システムを設計構築することを目的とする。本年度は、生体分子であるジペプチド鎖を動的制御が可能な"molecular scaffold"であるフェロセン分子に導入し、不斉中心および多様な水素結合を用いて構造規制された不斉反応場構築に取り組んだ。 ジペプチド鎖として、不斉中心を有するアミノ酸の最小分子であるアラニンおよび構造規制部位として機能するプロリンからなるアラニルプロリン鎖に着目した。C末端に配位サイトとしてピリジル基を有するアラニルプロリン鎖をフェロセン分子に導入することにより、新規フェロセン誘導体を設計合成した。設計合成したフェロセン誘導体において、ペプチド鎖間の分子内水素結合により分子全体が不斉構造規制されることがX線結晶構造解析から明らかとなった。溶液中においても構造規制された構造は保持されており、CDスペクトルにおいて不斉構造規制に基づくICD(induced circular dichroism)が観測された。次に、不斉構造規制場を利用した有機分子との錯形成について検討を行った。フェロセン誘導体は、(lR,3S)-ショウノウ酸と共結晶し、分子間水素結合に基づく1:2錯体を形成した。(lR,3S)-ショウノウ酸は水素結合架橋分子として機能しており、連続的な分子間水素結合によって二重らせん状にパッキングしていることが明らかとなった。また、(lR,3S)-ショウノウ酸と錯形成しても、フェロセン誘導体の不斉構造規制された構造は保持されていた。 以上の如く、ペプチド鎖の不斉構造誘起に基づく不斉反応場構築の基礎的知見を得た。
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Research Products
(1 results)