枯草菌細胞表層蛋白質の安定性及び局在性における分泌プロテアーゼの影響

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 14760046
• Research Institution: Shinshu University
• Principal Investigator: 山本 博規 信州大学, 繊維学部, 助手 (20262701)
• Keywords: 枯草菌 / 細胞表層蛋白質 / 細胞壁溶解酵素 / 分泌プロテアーゼ / 表層プロテアーゼ / エピトープタグ / 細胞分離 / 細胞分裂

Research Abstract

細胞表層及び分泌蛋白質のマッピングを行うと共に、これらの蛋白質群に対する分泌プロテアーゼの影響について解析を進めた。7種類の分泌プロテアーゼ多重欠損株を用いた結果、WapAのプロセッシングは主にEprによりなされていることが明らかになった(2番目の論文参照)。しかしながらLytFやLytE,LytD等の細胞壁溶解酵素のスポットは検出できなかった。そこでこれらの細胞壁溶解酵素の末端にエピトープtagとして3xFLAG配列を融合させることにより、それらの局在部位並びにプロテアーゼによる分解の有無を明らかにすることを試みた。まずLytF,LytE,LytCに3xFLAGを翻訳融合させた株を構築し、蛍光顕微鏡を用いた観察を行った。その結果、D,L-endopeptidaseであるLytF及びLytEは分裂面及び分裂後の極に局在し、細胞分裂の最終段階である細胞分離に機能していることが明らかになった。一方amidaseであるLytCは細胞表層にほぼ均一に分布していた。次に細胞表層及び分泌プロテアーゼによる分解の有無を検出するために、これら3種類の細胞壁溶解酵素と3xFLAG融合蛋白質についてWestern blot解析及びzymographyを行った。その結果、これらの融合蛋白質は細胞表層に正常に分泌され、3xFLAGエピトープタグは安定に保持されていることが明らかになった。またLytF-3xFLAG及びLytE-3xFLAGは表層プロテアーゼWprA及び分泌プロテアーゼEprにより分解を受けるのに対し、LytC-3xFLAGはほとんど分解を受けないことが判明した。この結果はwprA epr二重欠損株を用いた蛍光顕微鏡観察でも確認された。以上の結果から、細胞表層プロテアーゼであるWprA並びに分泌プロテアーゼであるEprは、分裂後の細胞の極に残ったLytE,LytEを特異的に分解していることが明らかになった(1番目の論文参照)。このように細胞壁溶解酵素が細胞表層の異なる部位で機能していることは非常に興味深い発見である。さらに表層プロテアーゼとの相互関係についての知見も得られたことは、細胞分裂・細胞分離の全体像をより詳細に理解する上でも意義深いものであると考えられる。

Research Products

• [Publications] Yamamoto, H., S.Kurosawa, J.Sekiguchi: "Localization of the vegetative cell wall hydrolases LytC, LytE, and LytF on the Bacillus subtilis cell surface and stability of these enzymes to cell wall-bound or extracellular proteases"Journal of Bacteriology. 185. 6666-6677 (2003)
• [Publications] Antelmann, H., H.Yamamoto, J.Sekiguchi, M.Hecker.: "Stabilization of cell wall proteins in Bacillus subtilis : A proteomic approach."Proteomics. 2. 591-602 (2002)
• [Publications] Fukushima, T., H.Yamamoto, A.Atrih, _S.J.Foster, J.Sekiguchi: "A polysaccharide deacetylase gene (pdaA) is required for germination and for production of muramic δ-lactam residues in the spore cortex of Bacillus subtilis."Journal of Bacteriology. 184. 6007-6015 (2002)