きのこの子実体形成の分子機構の解析

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 14760063
• Research Institution: Forestry and Forest Products Research Institute
• Principal Investigator: 宮崎 安将 独立行政法人森林総合研究所, きのこ・微生物研究領域, 研究員 (40343800)
• Keywords: きのこ / シイタケ / 子実体形成 / 遺伝子 / サブトラクション / cDNA / 相同性 / 転写発現

Research Abstract

きのこ類は国内だけでも年間約2300億円もの市場を抱える重要な農産物であり、日本人が好む食材の一つである。しかし、その栽培は従来からの固定的な方法で行われており、画期的な品種や育種法が望まれている。そこで筆者は、菌類としては非常に特異な生命現象を示すきのこの生物学的特性を明らかにするために、担子菌類の子実体(きのこ)形成時において特異的に発現する遺伝子について解析を行った。
最もポピュラーなきのこであるシイタケ(Lentinula edodes)において、子実体形成の分子機構を詳細に解析するために、シイタケに対しcDNA-RDA法を改変したPCRを用いた遺伝子サブトラクションを試みた結果、約50クローンの子実体特異的に発現すると考えられる遺伝子cDNA断片の単離に成功した。これらのcDNA断片の塩基配列を解析し予想されるアミノ酸配列について遺伝子データベースを検索した結果、これらcDNAがコードする産物は代謝、シグナル伝達及び疎水性できのこを形作るタンパク質などに相同性があることが明らかとなった。また、いくつかのクローンは相同性を示す遺伝子がデータベース上に存在しなかったため、子実体形成に関与するきのこに特異的な新規遺伝子であると考えられた。
これら得られたクローンのうち特に興味深い配列を有する13遺伝子について子実体形成過程における転写発現パターンをRT-PCRにより調べた結果、子実体形成過程を通じて構成的に発現しているもの、胞子形成を行う成熟子実体中にのみ発現しているもの及び子実体発生の初期段階である子実体原基にのみ発現しているもの、の大きく分けて3パターンに分類することが出来た。これらのうち、子実体原基時に発現している遺伝子は子実体の形成・成熟に関わっていると予想される。

Research Products

• [Publications] Murata H, Miyazaki Y.: "sigma(marY1),the LTR of the gypsy-Type Retroelement marY1 from Basidiomycete Tricholoma matsutake, Allows Multicopy DNA Integration in Lentinula edodes."Bioscience, Biotechnology and Biochemistry. 68・1. 218-221 (2003)