2003 Fiscal Year Annual Research Report
海洋における細菌膜由来の溶存有機物の分布とその分解機構
Project/Area Number |
14760126
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
柴田 晃 創価大学, 工学部, 助手 (30329164)
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Keywords | 細菌現存量 / 細菌生産 / 細菌死滅 / 細菌膜成分 |
Research Abstract |
昨年度の年間を通じて、相模湾の真鶴沖において、0〜100mにおける計7層から試水を採取し、細菌生産、ウィルス数、鞭毛虫数、水温、塩分濃度、Chl..α濃度、栄養塩類濃度の深度分布を毎月調査した。 得られた結果を用いて、細菌現存量に対する各パラメーターの関係を評価するために重回帰分析を行ったところ、相模湾の真鶴沖の細菌現存量はChl.α濃度に大きく影響されていることが示された。このことは、細菌生産は陸域より降雨や河川を通して供給される有機物よりも、むしろ植物プランクトンの基礎生産の過程で生産される細胞外代謝産物(溶存有機物)を利用して主に行われていることを意味している。 一方、細菌現存量をその生産で割ることにより得られる細菌の回転時間に対する従属栄養性鞭毛虫数との関係には有意な相関が認められなかったものの、その回転時間とウィルス数との関係には有意な負の相関が認められた。このことから、調査海域における細菌群集の死滅の制御は、鞭毛虫による捕食よりもウィルスの溶菌作用がより寄与していることが示唆された。また、データ数に限りがあるものの(n=14)溶存の細菌膜成分(リポ多糖)と、細菌の回転時間のそれとの間に有意な逆相関の関係が認められたことから、その生成にウイルスの溶菌が関与していることが示唆された。 本研究の結果から、以下のような結論を得た。相模湾真鶴沖における細菌群集の生産(増殖)は、主に植物プランクトンによる光合成に伴い放出される溶存有機物によって制御されている一方、その死滅は主にウイルス(バクテリオファージ)による溶菌を主な要因としている。また重回帰分析の結果から、細菌現存量は、前者によるボトムアップ・コントロールによりを制御されていることが示唆された。また、溶存のリポ多糖の分布と細菌の回転時間との逆相関の関係は、本海域における、ウイルスの溶菌作用を通じた溶存のリポ多糖の生成を示唆するものと考えられる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Ohwada, K., M.Nishimura, M.Wada, H.Nomura, A.SHibata et al.: "Study on the effect of water-soluble fractions of heavy-oil to coastal marine organisms using enclosed ecosystems, mesocosms"Marine Pollution Bulletin. 47. 78-84 (2003)
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[Publications] Yamada, H., H.Takada, K.Toyoda, A.Yoshida, A.Shibata et al.: "Study on the fate of petroleum-derived polycyclic armatic hydrocarbons (PAHs) and the effect of chemical dispersant using an enclosed ecosystem, mesocosm"Marine Pollution Bulletin. 47. 105-113 (2003)
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[Publications] 大和田鉱一, 西村昌彦, 和田 実, 野村英明, 柴田 晃, 他5名: "重油の微量水溶性画分が沿岸生態系に与える影響に関するメゾコズム実験"月刊海洋. 35. 113-119 (2003)