2002 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル経済下の条件不利農村地域振興のための新たなパラダイム形成に関する研究
Project/Area Number |
14760143
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
矢野 泉 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 助教授 (90289265)
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Keywords | グローバル経済 / ローカル経済 / 条件不利 / 地場市場 |
Research Abstract |
本年度は主に本研究課題の前提となる経済のグローバル化についての理論研究を行った。グローバル化については国内外の経済学、社会学、文化人類学の各分野における既存文献を収集、検討した。また同時に、日本の農村の「条件不利」について文献整理を行った。既存の研究における農村の「条件不利」を規定する要件は農業の生産過程に関連した土地利用や生産費等が重要なファクターであったが、それ以外に生産過程に関連した要因では高齢化率、地域就業市場構造等、また生産過程だけではなく流通過程に関連した市場アクセス等の要因も重要であることから、多様な条件から考察した「条件不利」の検討を行った。さらに、グローバルの対極に位置づけられてきたローカル経済やローカル産業の位置づけを日本の中山間地農漁村の実態調査をふまえて検討した。実態調査では、島根県石見町における生きがいづくり・町づくりと一体となった農業について調査を行い、その地域的展望と課題を考察した。その結果、「条件不利」が短期的な生産・流通効率面においては該当するが、長期的な人的資源の育成と農村の安定的継続の視点から検討すると、「不利」という評価が一面的であることを導き出した。また山口県下関市における低迷する沿岸漁業にとっての地場水産物市場存立意義を検討した。この地域では漁業と市場(生産と販売)が相互規定及び補完関係にあり、単に販路の拡大や漁獲量の増大が漁家経済の継続的維持には貢献しないことを導き出した。 本年度の理論及び調査研究をふまえ、ローカル経済又は産業は、対グローバル経済としての位置づけよりもグローバル経済下におけるオルタナティブな経済であると考えることができるのではないかという仮説が成立した。
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