2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本稲作農業における労働の異質性および市場不完全性:非入れ子型検定による検証
Project/Area Number |
14760149
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Research Institution | Nagoya Keizai University |
Principal Investigator |
園田 正 名古屋経済大学, 経済学部, 講師 (60329844)
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Keywords | 労働の異質性 / 労働市場の不完全性 / 農家家計モデル / 非入れ子型検定 |
Research Abstract |
本研究では,労働の質に関する仮説,労働市場条件に関する仮説を組み合わせた六つの複合仮説について,農家家計モデルを比較する実証法を提案し,日本の稲作農家のデータに適用した。具体的には,労働の質については農業・非農業労働が同質か,異質かの二仮説を,労働市場条件については農業労働市場が競争的か,欠落的か(つまり,家族労働による完全自己雇用か),非農業労働市場が競争的か,制限的かの四仮説を組み合わせて検討した。 農家家計モデルは農家の生産面と消費面の行動を同時に説明するモデルであるが,既存の推定法を所与とすれば,六仮説の下における農家家計モデルの比較はそれらの生産面と消費面を別々に比較するのが妥当であることをわかった。具体的には,モデルの生産面は農業労働投入に関する最適条件を比較した。他方,モデルの消費面はalmost ideal demand system(AIDS)で表現し,それらを一般化積率法(GMM)で推定し,非入れ子型検定によってAIDSの比較をおこなった。後者では,paired nonnested test(対立仮説が一つの場合の検定)とmultiple nonnested test(対立仮説が複数の場合の検定)を併用した。 実証分析の結果,農業労働と非農業労働は異質であり,農業労働市場は欠落しており,非農業労働市場は競争的であるという仮説のみが有効であった。また,この仮説の下で農家家計モデルを推定すると,(1)農業労働供給関数には高齢者と主婦などの縁辺的労働者の性質が強く現れ,(2)非農業労働供給関数には家計内における基幹的労働者の性質が強く現れることがわかった。 完成した論文は現在,外国専門雑誌に投稿中であるとともに,今年の8月に開かれるInternational Association of Agricultural Economistsでの発表が決まっている。
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