2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14760167
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岡田 啓嗣 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (30333636)
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Keywords | 複雑地形 / 熱収支 / 大気境界層 / 高層気象観測 / 局地気候 / 冷気湖 / 沈降加熱 / SAP FLOW |
Research Abstract |
本研究は、地表面状態が四季で著しく異なる寒冷地域の複雑地形を対象に、水資源・農林気象資源・温暖化ガスの動態を把握するための基礎資料として、地表面および大気境界層の熱収支、それらの熱交換過程と局地気候の関係等を調べることを目的としたものである。 本年度は、7月と9月の2回にわたり、係留気球を用いた高層気象観測と超音波風速計および4成分の放射収支計を用いた熱収支観測、盆地斜面の2高度における温位の観測を行った。上記の観測等と平行して、SAP-FLOW(樹液流)の調査(7-10月)も行った。 地表面-大気境界層の熱交換過程ついては、本年度のデータと過去のデータを併せて検証したところ、以下の結果が得られた。盆地の特徴的局地気候である冷気湖の解消過程では、季節によらず上層大気の沈降による加熱の効果(沈降加熱)が極めて大きいことがわかった。また、沈降加熱は主に盆底部で生じ、周囲の斜面部分上空の大気を加熱する役割があることが示唆された。夏期の日中における混合層維持過程では、盆底から供給される顕熱フラックスは、盆定上空のみならず斜面上空の気層も加熱する側に働くことが推察された。 こうした大気境界層の動態を調べることで、逆算して領域全体の平均的な熱収支を把握することが可能であると考えられる。この考えに基づき本年度と過去のデータから、夏期の盆地全域の蒸発散量を推定したところ、盆底部の観測値の2.2倍となった。しかし、地表面状態が四季で著しく異なる寒冷地域は、地表面-大気の交換過程も季節毎に大きく異なるため、さらに観測事例を増やしていく必要がある。 SAP FLOWの調査では、斜面域に存在する森林部分の蒸発散量推定の可能性についても検討したが、本年度の調査のみでは結論が出ず、次年度以降も継続して調査していく予定である。
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