2002 Fiscal Year Annual Research Report
長期的に異なる光質環境が植物の光合成特性と個体成長特性に与える影響の解明
Project/Area Number |
14760168
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
兼子 敬子 (大橋 敬子) 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (50332599)
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Keywords | 青色光 / 赤色光 / 光質 / 光合成 / イネ / 固体成長 |
Research Abstract |
赤色光に青色光を添加して,長期間照射して成育させた植物では,赤色光のみの照射と比較して乾物生産性が向上する傾向にあるという報告があるが,その機構は未解明である。そこで本研究では,青色光の添加が植物の成長に与える影響を解明することを目的として,長期的な赤色光および赤色青色混合光照射下におけるイネ(日本晴)の個体成長および各器官への窒素分配について調べた。栽培光源には赤色と青色の発光ダイオードを用い、赤色光のみを照射(以後,R100区),または赤色青色混合光を照射(全PPFDに占める赤色光と青色光の割合がそれぞれ80%と20%;以後,R80B20区)し,PPFD 460μmol m^<-2>s^<-1>で35日問水耕栽培した。 全乾物重はR80B20区がR100区より若干大きかったが、草丈,総葉面積,比葉面積(SLA),葉重比(LWR)には処理間に有意差はなかった。長期間(4週間)の光質処理では、光質は日本晴の形態にほとんど影響を与えないことがわかった。個体の還元態窒素集積量はR80B20区がR100区より大きく,さらに葉面積あたりの還元態窒素量もR80B20区で大きかった。R80B20区において,個体全体および葉面積あたりの還元態窒素量がR100区より大きくなる傾向は,低窒素栄養条件下で栽培したイネでも認められた。 以上より,赤色光への青色光の添加によりイネの窒素吸収が促進される可能性、あるいは、吸収した窒素を還元態窒素にする反応が促進される可能性が示唆された。現在,日本晴と窒素吸収特性の異なる品種であるササニシキを供試材料として同様に試験しており、その結果を含めて赤色光へ青色光を添加して栽培したときのイネの乾物生産性と窒素吸収・利用特性についての理解をさらに深める予定である。
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