2002 Fiscal Year Annual Research Report
肥満モデルラットを用いた骨格筋・脂肪組織間のクロストーク機構の解明
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14760186
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山内 啓太郎 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (70272440)
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Keywords | 骨格筋 / 脂肪 / 筋衛星細胞 / 分化 / トランスジェニック / 培養 / 肥満 |
Research Abstract |
本研究では、骨格筋の発達と体内の脂肪蓄積との間には相互作用が存在する、という仮説を検証することを目的とした。本年度はそのなかでも特に、骨格筋発達の低下としばしば随伴して観察される脂肪蓄積に着目し、申請者らの保有するhGHトランスジェニック(Tg)ラットが、生後早期から骨格筋発達の低下、著しい体内脂肪の蓄積を呈することから、本ラットをその相互作用解明のモデルとして利用することを考えた。 本Tgラットの骨格筋の生後の発達について解析した結果、(1)生後2ヶ月以降、すでにその発達はほとんど停止しており、(2)この時期からすでに骨格筋線維内に脂肪蓄積が生じていることが判明した。また、本Tgラットの血清を、筋衛星細胞初代培養系に添加したところ、(2)筋管細胞への分化が抑制され、細胞内に脂肪滴を有するような異常な細胞形態を呈した。これらの結果から、本Tgラットにおける骨格筋発達の低下には、筋衛星細胞の本来有する筋分化能が損なわれるという現象が関与していることが推察され、その結果、筋衛星細胞の脂肪細胞への分化が生じている可能性が高いと考えられた。そこで、あらためて筋衛星細胞の脂肪細胞への分化機序について細胞レベルで検討するために、(3)トログリタゾン添加による筋衛星細胞初代培養系の脂肪細胞への分化系を確立した。さらに、この系を用いた検討により、(4)それが由来する骨格筋により筋衛星細胞の脂肪細胞への分化能には違いが見られることや、(5)筋衛星細胞の由来するラットの年齢によっても脂肪細胞への分化能には違いが見られること、が判明した。 本年度は、Tgラットの繁殖効率が低下するという予期せぬ事態が生じたため、本ラットを用いた検討は必ずしったが、今回得られた知見は、筋衛星細胞の分化能が、肥満や老化に伴って変化する生体内環境に大きく影響さち筋衛星細胞が高い程度で可塑性を有した細胞であるという可能性を引き出した点では、意義深いと思われる。
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