2003 Fiscal Year Annual Research Report
乳腺腫瘍犬の病態とヘルパーT細胞産生サイトカインとの関係についての研究
Project/Area Number |
14760203
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
嶋田 照雅 大阪府立大学, 農学生命科学研究科, 助教授 (00264812)
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Keywords | 乳腺腫瘍 / ヘルパーT細胞 / サイトカイン / γ-インターフェロン / インターロイキン-2 / インターロイキン-4 / インターロイキン-6 / インターロイキン-10 |
Research Abstract |
健常犬と治療前の乳腺腫瘍犬よりに採取分析した末梢血単核球よりtotal RNAを抽出し、RT-PCR法によりγ-IFN、IL-2、IL-4、IL-6およびIL-10のmRNAの発現を検討した。その結果、悪性乳腺混合腫瘍と乳腺癌の症例は双方とも健常犬に比較して、IL-2 mRNAの発現率では優位に低値、IL-10 mRNAの発現率では優位に高値を示した。乳腺癌の症例では、さらに健常犬と比較してIL-6 mRNAの発現率においても優位に高値を示した。また、乳腺腫瘍犬では、エストロジェンの血中濃度が高い傾向にあり、また腫瘍組織においてIL-10やTGF-β mRNAの発現が高率に認められた。これらの結果より、乳腺腫瘍犬では、細胞性免疫応答が抑制されており、その抑制は性ホルモンや腫瘍細胞から産生されるサイトカインによるものと考えられた。 次に、外科療法後の再発、転移の有無と末梢血単核球におけるサイトカインmRNAの発現との関係を検討した。その結果、術後においてγ-IFNやIL-2 mRNAの発現が認められるようになった症例では、術後の再発転移が認められない傾向であった。また、摘出した腫瘍組織に浸潤している単核細胞の数、subset、サイトカイン mRNAの発現ならびに腫瘍細胞におけるMHC class Iの発現と症例の予後を検討した。その結果、術後において再発転移が認められない症例の腫瘍組織では、腫瘍組織内に多数のCD8陽性細胞が浸潤しており、その様な腫瘍組織では、MHC class Iを発現した腫瘍細胞が多数認められた。これらの結果より、乳腺腫瘍犬の予後は免疫担当細胞による腫瘍細胞の認識と術後における細胞性免疫応答の賦活化に密接に関係しているものと推察された。 以上の結果より、乳腺腫瘍犬の病態と予後には、症例の免疫応答、特に細胞性免疫応答が密接に関係していることが推察された。
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