2002 Fiscal Year Annual Research Report
GABA_A受容体に対する揮発性麻酔薬の二方向性作用のメカニズム
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14770040
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
上野 晋 産業医科大学, 医学部, 講師 (00279324)
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Keywords | GABA_A受容体 / 揮発性麻酔薬 / アフリカツメガエル卵母細胞 / チャネルブロック作用 / 膜貫通領域 |
Research Abstract |
揮発性麻酔薬は中枢神経系のGABA_A受容体機能を増強することが知られており,その増強作用には受容体を構成するαサブユニット中,N末端より2番目の膜貫通領域のSer270が必須であることが知られている。一方,イソフルランはGABA_A受容体に対してチャネルブロック作用を持つことが最近報告されてきているが,その詳細なメカニズムは明らかではない。本年度研究では揮発性麻酔薬の増強作用を消失させた変異GABA_A受容体を用いて,このチャネルブロック作用についてさらに検討することを試みた。 アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いて,野生型GABA_A受容体(α_2β_2),変異GABA_A受容体[α_2(S270I)β_2,α_2(S270W)β_2]を発現させ,GABA誘電電流に対するイソフルラン(1 MAC)の作用をGABA用量依存性に検討したところ,最大反応を約70%抑制しGABAのEC_<50>が減少した。またGABA非存在下でチャネルが活性化しているα_2(S270W)β_2では,イソフルランの単独投与でピクロトキシンの単独投与と類似の結果が得られた。α_2(S270I)β_2におけるGABA最大反応の抑制効果はエンフルランでも認められたが,ハロセンやエタノールでは認められなかった。またγ_<2S>サブユニットを加えα_2(S270I)β_2γ_<2S>として発現させた場合,最大反応の抑制効果はα_2(S270I)β_2と比べ減弱した。以上の結果から,イソフルランの増強作用を消失させた変異GABA_A受容体において,イソフルランのチャネルブロック作用はより顕著となり,増強作用とは異なる部位を介して生じているものと考えられた。またこのチャネルブロック作用はエーテル性麻酔薬に選択的であり,また5量体であるGABA_2受容体の構成成分比,すなわちSer270変異が導入されたサブユニットの数に依存している可能性も示唆された。
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