Research Abstract |
癌抑制遺伝子p53蛋白質は,MDM2を介する分解を受けるが,その際,p53にユビキチンが付加され,最終的にプロテアソームで分解される.ユビキチン付加部位の候補として,C末端領域のリシン残基が考えられる.370,372,373,381,380のリシン残基をアラニンに置換した変異p53を作製して,そのユビキチン化の程度,細胞に与える影響を解析した. これらのリシン残基を4つ以上変異したp53をMDM2発現プラスミドとともに,非小細胞肺癌細胞株(H1299)で発現させると,野生型p53とMDM2の共発現で認められるような,p53蛋白レベルの低下,ユビキチン付加が認められなかったことより,p53C末端領域のリシン残基が重要であることが示唆された.しかし,それぞれのリシン残基単独の突然変異では,MDM2との共発現でp53蛋白レベルの低下,ユビキチン付加が認められたことより,これらのリシン残基の中で,ユビキチン付加部位として単独のリシン残基を想定するよりも,複数のリシン残基が同時にユビキチン付加を受けることが,p53分解に重要であると考えられた. このリシン残基変異p53の消化器癌に対しての治療効果を検討するため,大腸癌細胞株(Colo201,LoVo,WiDr)を用いて,リシン残基p53発現プラスミドをトランスフェクションし,コロニー形成能に与える影響を検討した.しかしながら,十分な発現を得ることが困難であり,効率の良い遺伝子導入法が必要となった.そのため,リシン残基p53発現アデノウイルスを作製した.今後は,このアデノウイルスを用いて,消化器癌細胞への効果を検討する予定である.
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