2002 Fiscal Year Annual Research Report
レトロウイルスエンベロープ蛋白質による膜融合のシグナル伝達経路
Project/Area Number |
14770134
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
久保 嘉直 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (30273527)
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Keywords | レトロウイルス / エンベロープ蛋白質 / 膜融合 |
Research Abstract |
マウスレトロウイルスの細胞内侵入は、ウイルスエンベロープ膜と標的細胞の細胞膜が融合することによって達成される。ウイルスがコードするエンベロープ蛋白質は、C末端に存在するRペプチドが切断されることによって、膜融合活性が賦活化されることが知られている。この結果、Rペプチドが切断されたエンベロープ蛋白質(R-Env)は、その膜融合活性により細胞融合を誘導するが、Rペプチド未切断のエンベロープ蛋白質(R+Env)は細胞融合を起こすことができない。しかし、XC細胞においては、R+Env蛋白質によっても細胞融合を誘導することが知られており、このXC細胞特異的な現象の解析を行った。 マウスレトロウイルスの感染受容体のC末端にHAタグを結合させ、XC細胞とマウスNIH3T3細胞に導入し、抗HA抗体によりウエスタンブロッティングを行った。その結果、感染受容体に結合する糖鎖構造の違いにより分子量が異なることがわかった。この糖鎖が、XC細胞特異的なR+Env蛋白質による細胞融合に重要であるかどうかを知るため、糖鎖付加阻害剤であるツニカマイシンの効果を分析した。その結果、XC細胞におけるR+Envによる細胞融合は、ツニカマイシンにより大きく阻害されたが、R-Envによる細胞融合は、ほとんど影響を受けないことがわかった。この結果は、XC細胞特異的なR+Env蛋白質による細胞融合が、蛋白質の糖鎖付加を必要とすることを示している。しかし、ツニカマイシンは細胞に存在するすべての糖蛋白質に作用することから、感染受容体に結合した糖鎖が重要なのか、それ以外の蛋白質に結合した糖鎖が重要なのかはわからない。そこで、感染受容体の糖鎖付加欠損変異体をXC細胞に導入し、その細胞におけるR+Envによる細胞融合を解析した。その結果、糖鎖付加欠損受容体を発現するXC細胞においても、R+Envにより細胞融合が誘導され、正常XC細胞と同様に、ツニカマイシンによって大きく阻害されることがわかった。これらの結果より、XC細胞特異的なR+Envによる細胞融合は、感染受容体以外の未知の蛋白質の糖鎖付加が必要であることが示された(投稿中)。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Y.Kubo, T.Ono, M.Ogura, A.Ishimoto, H.Amanuma: "A glycosylation-defective variant of the ecotropic murine retrovirus receptor is expressed in rat XC cells"Virology. 303. 338-344 (2002)
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[Publications] M.Katane, E.Takao, Y.Kubo, R.Fujita, H.Amanuma: "Factors affecting the direct targeting of murine leukemia virus vectors containing peptide ligands in the envelope protein"EMBO reports. 3. 899-904 (2002)