2002 Fiscal Year Annual Research Report
非喫煙者における、CYP2A6ならびにUGT1A7多型と肺癌リスクの関連の検討
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14770167
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安藤 昌彦 京都大学, 保健管理センター, 助手 (10322736)
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Keywords | チトクロームP450 / 喫煙 / 肺がん |
Research Abstract |
今年度の研究では、ニコチンの代謝に関わる主要な酵素であるとともに、タバコ煙中に含まれる癌原性化学物質ニトロソアミンの代謝的活性化に関係するとされるチトクロームP450(CYP)2A6について、その活性喪失をきたす全欠損型遺伝的多型が肺がん発生リスクに及ぼす影響を、日本人の非喫煙女性集団において検討した。 平成9-13年度に行った「受動喫煙と肺がんに関する症例対照研究」において、薬物代謝にかかわる遺伝子の多型解析の承諾が文書により得られた人を対象として、CYP2A6の遺伝的多型のうちwild-type(CYP2A6*1A、*1B)、deletion-type(CYP2A6*4C)について調べた。CYP2A6遺伝的多型と肺癌発生リスクの関連については、年齢、調査地域、配偶者による受動喫煙について調整したロジスティック分析によるオッズ比とその95%信頼区間をもとに判定した。 解析対象としたのは322人(症例127人、対照195人)で、配偶者の喫煙による受動喫煙歴をもつ割合は症例で70.9%、対照で66.1%であった。累積受動喫煙時間の中央値と範囲は症例で3,264(0-145,152)時間、対照で1,572(0-282,240)時間であった(P=0.252)。CYP2A6遺伝的多型と配偶者の喫煙による累積受動喫煙時間の関係では、全欠損型多型をもつ場合に受動喫煙を避ける傾向は認められなかった(P=0.666)。CYP2A6遺伝的多型と肺がんリスクに関して、*1A/*1Aを基準とした場合の*4C/*4Cにおける肺癌罹患のオッズ比は単変量で0.56(0.15-2.06)、多変量で0.58(0.16-2.18)と低下がみられたものの有意ではなかった。全欠損型多型をもたない集団、全欠損型ヘテロ、全欠損型ホモの3群に分けた場合のオッズ比は単変量でヘテロ0.98(0.60-1.59)、ホモ0.60(0.18-1.97)、多変量でヘテロ0.91(0.55-1.51)、ホモ0.62(0.18-2.05)と、やはり有意な低下は認めなかった。 今回の研究では、非喫煙女性において、CYP2A6遺伝的多型と肺がんリスクの間には有意な関連を認めなかった。ただし全欠損型多型は肺がんリスクを低下させる方向にあり、メタアナリシスなど検出力を高める方法により、CYP2A6遺伝的多型や環境要因との相互作用について検討する価値があるものと思われる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 安藤 昌彦: "Association of CYP2A6 gene deletion with cigarette smoking status in Japanese adults"Journal of Epidemiology. (In press).
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[Publications] 安藤 麻紀: "Genetic polymorphisms of the UDP-glucuronosyltransferase 1A7 gene and irinotecan toxicity in Japanese cancer patients"Japanese Journal of Cancer Research. 93. 591-597 (2002)