2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14770224
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
柴山 恵吾 国立感染症研究所, 細菌第二部, 研究員 (50283437)
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Keywords | ヘリコバクターピロリ / アポトーシス / γ-glutamyltranspeptidase / 毒素 / 病原因子 |
Research Abstract |
この研究で私は、ヘリコバクターピロリのアポトーシス誘導因子の精製、同定を行った。ヘリコバクターピロリの菌体から、アポトーシス誘導因子を可溶化し、イオン交換カラム、疎水カラム、ゲル濾過カラムを用いて、目的の蛋白を精製した。精製過程におけるアポトーシス誘導活性の測定は、私が独自に見出したWSTによるassayと蛍光顕微鏡による測定で行った。このような方法で私が同定したアポトーシス誘導因子は、γ-glutamyltranspeptidase(GGT)であることが分かった。この蛋白をコードする遺伝子を欠損させた変異株は、アポトーシス誘導能が有意に低下したので、このGGTは、ヘリコバクターピロリのアポトーシス誘導活性に主要な役割を果たすものであることが分かった。つまり、GGTは主要な病原因子の一つである可能性が高い。このGGTは、これまでにへリコバクターピロリの病原因子と考えられてきたCagA蛋白、空胞化毒素、Lipopolysaccharide、ウレアーゼ等の様々な因子とは全く違うもので、今回の我々の発見はこの菌の病原性の研究を進めて行くにあたって新しい局面を開いたところである。GGTは、他の多くの細菌をはじめ、動物、植物細胞に広く存在する蛋白で、アミノ酸の取り込みに関与するとされているが、機能については不明な点も多く、特に細菌のGGTに関してはその生理機能については殆ど分かっていなかった。この研究による私の発見は、他の病原細菌の研究にも大いに役立つと思われる。それと共に、GGTがアポトーシスを誘導するという事実は、これまでに全く知られていなかったことであるだけでなく、作用メカニズムが、これまでに研究が進んでいる他の細菌毒素の概念とは全く異なるものである可能性が高く、今後さらなる研究で全く新しい毒素の作用機序が明らかになる可能性が高い。 このように、今回の文部科学省科学研究費補助金で、非常に有用な研究結果を得ることが出来た。
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Research Products
(1 results)