2002 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト膵筋線維芽細胞におけるPARおよびAT1受容体を介する膵線維化機構の解明
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14770233
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
五月女 隆男 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (60311726)
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Keywords | ヒト膵腺房周囲筋線維芽細胞 / protease activated receptors / protease / 細胞内シグナル伝達 |
Research Abstract |
慢性膵炎における膵線維化の病態・治療法を開発することはこれまでの課題であった。ヒト膵より単離培養した膵腺房周囲筋線維芽細胞(PFCs)はこの膵線維化機序をin vitroで研究するのに最適の細胞系である。 今年度(平成14年度)は近年注目されてきたprotease activated receptors(PARs)を介するPFCsの細胞調節機構、線維化機構につき検討を加えた。PARsは7回膜貫通型の受容体で、proteaseによりそのN末端が切断されることにより活性化され、細胞内シグナル伝達を促進することが知られている。なかでもPAR-1はthrombin, trypsinにより、PAR-2はtrypsin, tryptaseによって活性化されるといわれている。今回、このPAR-1,-2について、検討した。 実験方法 1)PAR-1,-2mRNAの発現をヒトPFCs, Panc-1,MiaPaca-2,BxPC-3のcell lineでRT-PCRで検討した。 2)PAR-2を介したヒトPFCsの細胞増殖能をagonistic peptide(SLIGKV-NH_2)、trypsin添加条件下で検討した。同様にMAPK inhibitor(Apigenin),MEK inhibitor(PD98059),p38MAPK inhibitor(SB203580),PKC inhibitor(GF),PI3K inhibitor(Wortmannin),PTK inhibitor(Herbimycin A)の効果を^3H-thymidine incorporationで検討した。 3)PAR-1を介したヒトPFCsの細胞増殖能をagonistic peptide(SFLLRN-NH_2),thrombin添加条件下で同様に検討した。 結果 1)すべての膵由来cell lineにおいてPAR-1およびPAR-2 mRNA発現が認められた。 2)trypsin, SLIGKV-NH_2とも濃度依存性にPFCsの細胞増殖を亢進させた。この細胞増殖亢進作用はMAPK inhibitor(Apigenin),PKC inhibitor(GF),PTK inhibitor(Herbrimycin A)の投与により抑制された。 3)thrombin, SFLLRN-NH_2ともに濃度依存性にPFCsの細胞増殖を亢進させた。 プロテアーゼがPAR-1,PAR-2を介した間葉系細胞増殖作用を有することが明らかとなり、この細胞内シグナル伝達にはMAPK, PKC, PTKが関与している可能性が示唆された。
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