2003 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト膵筋線維芽細胞におけるPARおよびAT1受容体を介する膵線維化機構の解明
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14770233
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
五月女 隆男 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (60311726)
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Keywords | ヒト膵腺房周囲筋線維芽細胞 / アンギオテンシンII / アンギオテンシン受容体拮抗剤 / 膵線維化 |
Research Abstract |
慢性膵炎における膵線維化の病態・治療法を開発することはとれまでの課題であった。ヒト膵より単離培養した膵腺房周囲筋線維芽細胞(PFCs)はこの膵線維化機序をin vitroで研究するのに最適の細胞系である。 今年度(平成15年度)は近年注目されてきたangiotensin type1 receptor(AT-1 receptor)を介するPFCsの細胞調節機構、線維化機構につき検討を加えた。AT-1 receptorはangiotensin IIをligandとして線維芽細胞を活性化するとされる。特に肝臓や腎臓の間質系細胞はangiotensi II添加により線維化能の増加が起こるとされる。膵間葉系細胞PFCsのAT-1 receptorを介する線維化機構については未だ検討されていないため、angiotensin IIの作用を確認後、AT-1 receptor受容体拮抗剤の効果についても検討を加えた。 実験方法 1)AT-1,-2mRNAの発現をヒトPFCsでRT-PCRで検討した。 2)各濃度のAngiotensin II添加後の細胞増殖能をMTT assayと^3H-thymidine取り込み能で検討した。 3)angiotensin II添加後のコラーゲン合成能をPIP ELISAで検討した。 4)angiotensin II添加後のTGF-β産生につきELISA法および半定量的RT-PCR法で検討した。 5)2)-4)の実験についてはAT-1受容体拮抗剤であるvalsartanおよびlosartanの効果についても併せて検討した。 結果 1)AT-1受容体、AT-2受容体ともにPFCsにおいて発現がみられた。 2)angiotensin IIは添加48時間以降、濃度依存的(0.1nM-10μM)に細胞増殖能を促進させた。この効果はAT-1受容体拮抗剤valsartan(1-1000nM),losartan(10nM-10μM)の前処置にて抑制された。 3)PIP産生はangiotensin II(0.1nM-1μM)添加にて増加した。この促進効果はvalsartan(10-1000nM),losartan(0.1-10μM)で抑制された。 4)angiotensin II(10-1000nM)添加にてTGF-β1産生は促進した。また1μMのangiotensin II存在下に、この作用はvalsartan(10-1000nM),losartan(0.1-10μM)添加にて抑制された。 angiotensin IIはin vitroで膵線維化促進作用を有していると考えられ、AT-1受容体拮抗剤は生理的濃度でその作用を抑制することが明らかとなった。今後の臨床応用が期待される。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] tasaki K., Shintani Y., Saotome T, Andoh A., et al.: "Pro-Inflammatory Cytokine-Induced Matrix Metalloprotease-1(MMP-1) Secretion in Human Pancreatic Periacinar Myofibroblasts"Pancreatology. 3. 414-421 (2003)