2002 Fiscal Year Annual Research Report
抗うつ薬投与による脳由来神経栄養因子発現に伴って駆動される遺伝子カスケードの解析
Project/Area Number |
14770492
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
篠田 直之 千葉大学, 医学部附属病院, 助手 (10302556)
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Keywords | 抗うつ薬 / 転写因子 / 脳由来神経栄養因子 |
Research Abstract |
うつ病の治療薬として使用されている抗うつ薬は数週間投与しないと臨床効果が出ないことより、慢性投与で引き起こされる脳内の神経伝達系の変化に注目が集まってきている。本研究は、抗うつ薬の作用メカニズムを解明することを目的として、脳内の転写因子の一つであるAP-1結合に及ぼす代表的な抗うつ薬アミトリプチリンおよび抗うつ作用を有する脳由来神経栄養因子(BDNF)の効果を調べた。アミトリプチリンの単回あるいは慢性投与後に、ラット脳を摘出し、前頭皮質および海馬に分割した。サンプル調製後、電気泳動で流した後に、ゲルシフトアッセイ法にてAP-1結合能を調べた。アミトリプチリン(5or10mg/kg)の単回投与は、投与直後の前頭皮質および海馬におけるAP-1結合を増加し、その後は減少した。アミトリプチリン(10mg/kg)の慢性投与(3週間)は、前頭皮質におけるAP-1結合を増加し、その後は減少したが、アミトリプチリン(10mg/kg)の慢性投与(3週間)は、海馬におけるAP-1結合には影響を与えなかった。一方、アミトリプチリン(10mg/kg)の慢性投与(3週間)は、海馬および前頭皮質におけるBDNFの蛋白量を有意に増加させることが判った。さらに、BDNFの海馬歯状回への投与は、抗うつ作用を有することが報告されているが、今回、BDNFの海馬歯状回への投与は、海馬におけるAP-1結合を有意に増加せせることが判った。以上の結果より、転写因子AP-1は、BDNFによって制御されていること、および抗うつ薬の作用ターゲットである可能性が示唆された。
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