2003 Fiscal Year Annual Research Report
インスリン抵抗性に伴う高血圧発症における組織レニン・アンジオテンシン系の関与
Project/Area Number |
14770598
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
篠崎 一哉 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (20324577)
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Keywords | インスリン抵抗性 / 内皮機能障害 / 高血圧症 / アンジオテンシンII / 酸化ストレス / AT1受容体 |
Research Abstract |
インスリン抵抗性(IR)状態に伴う高血圧や血管内皮機能障害の発症機序と組織レニン・アンジオテンシン(RA)系との関連を明らかにするため、IRモデルラットおよびマウスにおけるRA系り動態とAT1受容体の役割について検討した。6週齢雄性Sprague-Dawleyラットを用い、8週間高フルクトース食(F群)あるいは標準食(C群)を摂取させ、各々その一部にAT1受容体拮抗薬(ロサルタン、30mg/kg/日)を投与し、(1)BasalおよびAII皮下注入(0.4mg/kg/日)時の7日間にわたる経時的な血圧変化を測定した。また、摘出胸部大動脈を用いて、(2)血管壁スーパーオキシドアニオン(O_2^-)生成量、NAD(P)Hオキシダーゼ活性を測定し、(3)等尺性張力試験により血管収縮、弛緩反応を検討した。さらに、AT1a受容体欠失マウス(AT1a-KO)とその対照マウス(C57BL/6J)にラット同様それぞれ8週間2種類の食餌を摂取させ、(4)RA系の遺伝子(アンジオテンシノーゲン、ACE、AT1a、AT1b、AT2のmRNA)および(5)NAD(P)Hオキシダーゼ構成蛋白(p22-phox、gp91-phox、p67-phox)の発現をそれぞれRT-PCR法、Western blot法により解析し、4群間で比較検討した。(1)F群ではC群と比較し、AII投与前の平均血圧は有意に高値であったが、AII注入によりその傾向はより増強した。両群ともロサルタン投与により血圧は低下し、C群との有意差は消失した。(2)F群ではC群と比較し、O_2^-生成量は約1.5倍、NAD(P)Hオキシダーゼ活性は約2倍の有意な高値を示した。ロサルタン投与により両者とも著明に低下し、C群との有意差は消失した。(3)フェニレフリンによる血管収縮反応には両群間で差はなかったが、F群ではC群と比較し、AIIによる収縮反応は低濃度から有意に亢進していた。アセチルコリンおよびA23187による内皮依存性の血管弛緩反応は、F群ではC群と比較し有意な低下を示した。ロサルタン投与により、AIIによる収縮は消失し、内皮依存性の血管弛緩反応は正常化した。(4)F群ではC群と比較し、AT1a mRNA発現のみが増加し、アンジオテンシノーゲン、ACE、AT1b、AT2、GAPDHのmRNA発現には4群間で差がなかった。(5)F群はC群と比較し、p22-、gp91-、p67-phoxの発現はいずれも増加していた。AT1a-KOはいずれの蛋白発現も著明に低下し、高フルクトース食負荷による発現増加は認められなかった。以上の結果より、IR状態における血圧上昇や内皮機能障害の機序には、組織AII/AT1a受容体機能の亢進を介するNAD(P)Hオキシダーゼの活性化によるO_2^-産生増加が関与すると考えられる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Shinozaki K, Kashiwagi A, Masada M, Okamura T: "Stress and vascular responses : oxidative stress and endothelial dysfunction in the insulin-resistant state"Journal of Pharmacological Sciences. 91・3. 187-191 (2003)
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[Publications] 篠崎一哉, 岡村富夫: "インスリン抵抗性に伴う血管障害とNO"医学のあゆみ. 204・9. 601-605 (2003)
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[Publications] 篠崎一哉, 西尾善彦, 柏木厚典, 岡村富夫: "インスリン抵抗性状態におけるプテリジン代謝を介した内皮機能調節の重要性"Therapeutic Research. 24・7. 1375-1382 (2003)
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[Publications] Fujioka H, Ayajiki K, Shinozaki K, Okamurura T: "Mechanisms underlying endothelium-dependent flow increase in perfused rat mesenteric vascular bed"European Journal of Pharmacology. 485・6. 219-225 (2004)
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[Publications] Shinozaki K, Ayajiki K, Nishio Y, Sugaya T, Kashiwagi A, Okamura T: "Evidence for a causal role of the rennin-angiotensin system in vasucular dysfunction associated with insulin resistance"Hypertension. 43・2. 255-262 (2004)
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[Publications] 篠崎一哉, 岡村富夫: "インスリン抵抗性とプテリジン代謝異常"日本ビタミン学会雑誌. 11. 607-608 (2004)