2002 Fiscal Year Annual Research Report
精子形成過程における新規抗酸化酵素ペルオキシレドキシン4の機能解析
Project/Area Number |
14770797
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
井内 良仁 山形大学, 助手 (60272069)
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Keywords | レドックス制御 / 酸化ストレス / ペルオキシレドキシン4(Prx4) / 精子形成 / 停留精巣 / 高温ストレス / 遺伝子改変マウス |
Research Abstract |
男性不妊に関しては遺伝的な問題の他にも食生活、ストレスといった環境の要因が大きいことが示唆されているが、精子形成異常をはじめとする生殖機能障害の根本的な治療法は見つかっていない。近年、受精能の高い精子の形成に酸化還元(レドックス)反応がが重要な働きをしていることが明らかにされつつある。当研究室では、新規抗酸化酵素として見いだされたペルオキシレドキシン4(Prx4)が、精子形成過程でユニークな発現を示すことを明らかにしてきた。Prx4は、分泌シグナル配列を持つためほとんどの臓器では分泌された後に細胞外で働くと考えられるが、精巣においてのみその分泌シグナルが切断されずに高分子型前駆体として存在する。また、この高分子型Prx4は、精子形成過程の進行と共に精子形成細胞で誘導され膜結合型として存在し、精子形成の最終段階で遺残体に残されるという特徴的な発現を示すことが解っている。これらのことはPrx4が本来持つ抗酸化作用と共に、精子形成にも密接に関与していることを示唆している。本研究ではPrx4が精子形成過程でどのような役割を果たしているのかを、病態モデルマウスとPrx4遺伝子をノックアウトした遺伝子改変マウスを作成し検討することを目的としている。 まず停留精巣モデルマウスにおけるPrx4の発現を検討したところ、モデルマウスにおいて分泌型のPrx4の発現量には大きな変化が見られなかったが、高分子型(前駆体)Prx4のみ発現量が特異的に減少していた。精巣は身体の他の部分に比較して数度低い陰嚢内に保持されており、このような低温条件が精子形成に必要とされている。停留精巣モデルマウスでは人為的に腹腔内に精巣を留まらせることにより、高温ストレスが原因となって精子形成障害などの影響を及ぼすと考えられる。今回の結果は、精巣内におけるタンパク質切断などのプロセシングを行うシグナルペプチダーゼ等の酵素活性の亢進がそれらの作用因子の一つとして何らかの関与をしている可能性を示唆する。 高温ストレスによる精子形成異常は元より、精子形成に関与する遺伝子群の解析は、その培養系が確立されていないことなどから非常に遅れている。Prx4が精子形成過程における役割を直接解明するために現在、Prx4遺伝子改変マウスを作成中である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Kaneko T, Iuchi Y, Kobayashi T, Fujii T, Saito H, Kurachi H, Fujii J: "Expression of glutathione reductase in the male reproductive system of rats supports the enzymatic basis of glutathione function in spermatogenesis"Eur. J. Biochem.. 269(5). 1570-1578 (2002)
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[Publications] Matsuki S, Sasagawa I, Iuchi Y, Fujii J: "Impaired expression of peroxiredoxin 4 in damaged testes by artificial cryptorchidism"Redox Report. 10(In press). (2002)
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[Publications] Kobayashi T, Kaneko T, Iuchi Y, Matsuki S, Takahashi M, Sasagawa I, Nakada T, Fujii J: "Localization and physiological implication of aldose reductase and sorbitol dehydrogenase in reproductive tracts and spermatozoa of male rats"J. Androl.. 23. 674-683 (2002)
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[Publications] Fujii J, Kaneko T, Iuchi Y: "Glutathione Redox Status in the Rat Reproductive System"XI Biennial Meeting of the Society for Free Radical Research International. 716. 217-220 (2002)
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[Publications] Fujii J, Kaneko T, Kobayashi T, Iuchi Y, Takahashi M: "Localization and Physiological Implication of Polyol-Metabolyzing Enzymes in Male and Female Reproductive Systems of Rat"International Congress Series. 1245. 363-364 (2002)
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[Publications] Iuchi Y, Kaneko T, Matsuki S, Sasagawa I, Fujii J: "Concerted Changes in the YB2/RYB-a Protein and Protamine 2 mRNA in the Mouse Testis under Heat Stress"Biol. Reprod.. 68. 129-135 (2003)