2002 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣黄体化・着床の分子機構と子宮に遊走する骨髄幹細胞の解析
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14770877
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
岡本 士毅 財団法人東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 研究員 (40342919)
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Keywords | GFP骨髄キメラマウス / 子宮内膜細胞株 |
Research Abstract |
妊娠過程を詳細に解析するため、生理機能を保持したままの顆粒膜細胞株を樹立した技術を用いて、受精卵の着床する子宮内膜組織に着目し、新たにSV40温度感受性T抗原を導入した子宮内膜細胞の株化に成功した(ESC2)。この細胞は各種サイトカインに応答して、ケモカインの1種と考えられているBRAKと命名されたサイトカインのmRNA発現量が著しく上昇することを確認している。更にESC2の性状と黄体ホルモン刺激等による遺伝子発現の変化を検討している。 GFP骨髄キメラマウスを用いた実験から、子宮へ定着するドナー由来細胞集団が存在し、これらの動向は妊娠経過に応じて変化し、妊娠初期では脱落膜層に多数のドナー由来GFP陽性血球細胞と、非血球細胞が遊走し、妊娠中期に胎盤が発達すると、胎盤周囲母胎側血管に分化する細胞も検出された。出産後は再びマクロファージなどの炎症性細胞の浸潤と同期して脱落膜層に再びドナー由来細胞が定着することも確認している。またGFPマウス子宮からCD45 negative, Sca1 positive非血球細胞を採取し、ブスルファン処理した新生仔マウス肝臓に移植して成長したマウスの子宮を観察すると、他のどの組織よりも有意に子宮にドナー由来GFP positive細胞が集束していた。つまり臓器に定着する細胞には環境が変わったとしても元々の組織へ戻る性質が残っていると仮定した。そこで、GFPトランスジェニックマウス骨髄造血幹細胞を新たに作成したESC2と共培養した後、X線照射マウスの尾静脈から移植し、ドナー由来細胞の動態を経時的に追ってみると、レシピエントマウスの子宮に相当量のドナー由来GFP陽性細胞の浸潤が検出された。これらは骨髄幹細胞に含まれる新しい細胞集団の目的組織との共培養を使った新しい細胞動員教育法の開発への糸口になるかも知れない。今後は遊走した細胞集団を回収しその解析等を含め、子宮特異的な遺伝子デリバリーの可能性に向けて更に詳細に解析を進めたい。
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[Publications] H.Tamura, S.Okamoto et al.: "In vivo differentiation of stem cells in the aorta-gonad-mesonephros region of mouse embryo and adult bone marrow"Experimental Hematology. 30. 957-966 (2002)
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[Publications] 岡本士毅, 原孝彦: "Annual Review血液2003:造血幹細胞の発生をめぐって"中外医学社. 240 (2003)