花粉症におけるT細胞抗原記憶維持機構の解明とペプチド療法への応用に関する研究

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 14770913
• Research Institution: Nagoya City University
• Principal Investigator: 鈴木 元彦 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (50326138)
• Keywords: 花粉症 / T細胞クローン / T細胞エピトープ / スギ / ヒノキ / ペプチド療法 / Cry j1 / Cha o1

Research Abstract

花粉症特異的メモリ-T細胞の生存、延長機構の解明を目的に、T細胞クローンのエピトープについての解析を施行した。具体的には、ヒトのスギ、ヒノキ花粉症特異的T細胞クローンST12の樹立に成功し、解析を加えた。T細胞クローンST12は、CD3^+、CD4^+、CD8^-、TCRα/β^+で、スギ主要アレルゲンCry j1とヒノキ主要アレルゲンCha o1に反応を示した。Cry j1もしくはCha o1の刺激により、ST12はインターロイキン4を産生したが、インターフェロンγは産生されなかった。従って、ST12はTh2タイプと考えられた。このドナーのHLA class II genotypeがDRB1^*0405/0409、DQA1^*0302、DQB1^*0301であることを確認した。Cha o1オーバーラッピングペプチドを作製し、ST12が認識するT細胞エピトープの解析をおこなった。ST12はGHSDIYSDDKSMKVTV(202-217のアミノ酸配列)に反応を示した。Cry j1についても同様に行い、GHDDAYSDDKSMKVTV(202-217のアミノ酸配列)、に反応することが確認された。次に、GHSDIYSDDKSMKVTVのaltered peptideを作製し、アンカー部位について調べたが、K214、V215、T216が反応において重要なペプチド(アンカー)であることが示唆された。さらに、これらのアンカーがT細胞サイトのアンカーであるか、APC(抗原提示細胞、MHC)サイトのアンカーであるか、FACScanを用いて調べた。その結果、^<216>TはAPCサイトのアンカーであることが判明した。
又興味深いことに、ST12はブタクサ花粉やバナナのPectate lyaseとも反応を示した(ブタクサ花粉は花粉症を引き起こす重要なアレルゲンである)。ブタクサ花粉やバナナのPectate lyase刺激に対してST12はインターロイキン4を産生、ST12自身の細胞生存延長効果を示した。
これらの研究成果は、花粉症に対する将来のペプチド治療に応用できるものと思われる。

Research Products

• [Publications] 高木繁, 中村善久, 鈴木元彦, 他: "ヒトT細胞クローンを用いて解析したヒノキ花粉major allergen, Cha o1エピトープの解析"耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会誌. 20・2. 210-211 (2002)
• [Publications] 鈴木元彦, 大野伸晃, 中村善久: "通年性アレルギー性鼻炎における嗅覚障害"アレルギーの臨床. 22・7. 556-559 (2002)
• [Publications] 鈴木元彦, 高木繁, 大野仲晃, 他: "スギ花粉症による鼻閉に対してプランルカストが有効であった症例の検討"Progress in Medicine. 22・2. 501-503 (2002)
• [Publications] 鈴木元彦, 中村善久, 大野伸晃, 他: "スギ、ヒノキ花粉症による嗅覚障害について"耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会誌. 21・2. 110-111 (2002)
• [Publications] 伊藤博隆, 大野伸晃, 中村善久, 大橋卓, 松本珠美, 鈴木元彦, 他: "2003年のスギ花粉飛散結果から"東海花粉症研究会会誌. 14・2. 3-7 (2003)
• [Publications] 大野伸晃, 鈴木元彦, 他: "CpG点鼻による鼻アレルギー炎症の制御"耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会会誌. 21・2. 46-47 (2003)
• [Publications] 鈴木元彦, 中村善久: "耳鼻咽喉科診療プラクティス・嗅覚、味覚障害の臨床最前線"文光堂. 40-41 (2003)