2002 Fiscal Year Annual Research Report
鼓膜癒着症における中耳腔ガス換気能と中耳粘膜における血流動態に関する研究
Project/Area Number |
14770926
|
Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
辻 富彦 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (30236880)
|
Keywords | 鼓膜癒着症 / 中耳含気腔圧 / 中耳粘膜血流 / ガス換気能 |
Research Abstract |
鼓膜癒着症において鼓膜の陥凹、癒着の生じる成因についてこれまで検討を行ってきた。鼓膜陥凹の成因の一つとして耳管の機能不全、特に陰圧解除の不能が以前より指摘されている。我々が行った臨床的検討からも同様に鼓膜癒着症における鼓室の陰圧解除の不能が確認されている。一方動物実験より鼓膜を損傷しないように中耳粘膜を除去することにより鼓膜癒着症が形成されたことから、鼓膜陥凹や癒着の成因として中耳粘膜による中耳含気腔の保持機能の破綻が関与していることが確認された。本研究では鼓膜癒着症における鼓膜の陥凹の成因と考えられる中耳粘膜のガス換気の障害につき中耳含気腔圧、中耳粘膜血流を中心として検討を行っている。 家兎の耳管よりインフルエンザ死菌を注入後、閉鎖し、実験的中耳炎モデルを作製した。未処置例と中耳炎例につき中耳含気腔庄と中耳粘膜血流を測定したところ、未処置群に比較し中耳炎例では有意に中耳粘膜血流の減少と中耳腔全圧の低下が認められた(日耳鼻2002)。またこの中耳炎モデルの鼓室の粘膜上皮下組織を炎症の程度によって分類したところ、炎症の程度が強くなるに従って、血流量は有意に減少し、中耳腔全圧ピーク値は低下する傾向があった(耳科2002)。以前からの臨床的、基礎的研究およびこれらのことより鼓室粘膜とくに上皮下組織の炎症により中耳粘膜の血流量の減少を招き、中耳含気腔圧の低下をきたすことが示唆された。 家兎を用いて、鼓膜を損傷しないように中耳粘膜を可及的に除去すると鼓膜癒着症が作製できる。この鼓膜癒着症モデルを用いて、中耳含気腔圧、中耳腔酸素分圧、中耳粘膜血流について今後測定を行なう予定である。先のことを踏まえてこれらの結果を解析することにより中耳炎の終末的状態である鼓膜癒着症における中耳腔のガス換気能と血流状態を把握し、鼓膜癒着にいたる病態生理を解明する。
|