2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14770980
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
松原 孝 関西医科大学, 医学部, 助手 (10278640)
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Keywords | 網膜ミクログリア / 実験的ぶどう膜炎 / ラット |
Research Abstract |
従来、人の内因性ぶどう膜炎の実験モデルとして、自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)が汎用されてきた。網膜血管周囲にはマクロファージと類似した機能を示すミクログリアが豊富に存在するが、今まで、EAUにおけるミクログリアの役割については検討されていなかった。正常網膜内のミクログリアは、特徴的な形態よりマクロファージと区別することは可能である。しかしながら網膜が病的な状態になりミクログリアが活性化されると特徴的な樹枝状突起を失い、肥大してマクロファージの形態とほぼ類似するためである。また活性化したミクログリアをマクロファージから区別するマーカーは現在のところ発見されておらず、他の多様な技術が必要とされてきた。最近、視神経切断後、その断面にダイ色素を塗布して、軸索原形質輸送により網膜ミクログリアを標識する方法が報告された。そこで我々は、その方法をEAUモデルに応用して網膜ミクログリアの動態観察を試みた。 実験動物として、成熟白色ラット(ルイス系)を用いた。右眼に視神経切断術を行い、その断端部にフルオレセイン色素(4Di-10ASP)を添付した。網膜可溶性抗原(S抗原)を完全フロインドアジュバンド(CFA)に乳化混和して、視神経切断後のラット足蹠に1回免疫注射してEAUを作成した。対照群にはEAUを作成しなかった。 視神経切断後網膜の神経節細胞、網膜ミクログリアは、4Di-10ASPに良く標識された。EAUでない正常状態の網膜ミクログリアは網膜内層のみに存在していた。免疫後9日から視神経切断術を施行した右眼にもEAUの発生を確認することができた。免疫後9日の網膜では外顆粒層と神経細胞層にミクログリアがみられ、網膜内層は少しのミクログリアしかみなかった。網膜内層および外層にはマクロファージの浸潤はなく、病理組織学的にも網膜構造は比較的正常であった。 今回の視神経切断による手技がEAUモデルの作成を阻害しないことが確認され、ミクログリアの標識に有効な方法であった。EAUのミクログリアが、マクロファージが視神経細胞層へ浸潤する前に、すでに網膜外層へと遊走を開始していたので、視神経変性へと導く炎症早期に大きく関わっていることが示唆された。
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