2002 Fiscal Year Annual Research Report
口腔内立体認知の神経機構-慢性サル体性感覚皮質における特徴抽出ニューロンの性質-
Project/Area Number |
14771029
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
戸田 孝史 東邦大学, 医学部, 助手 (40250790)
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Keywords | 口腔内立体認知 / 体性感覚皮質 / 特徴抽出過程 / 階層的情報処理 / 複合型受容野 |
Research Abstract |
本研究課題は、口腔内立体認知の観点から、慢性サル体性感覚皮質の口腔再現領域から単一ニューロン記録を行い、受容野の性質を領野間で比較するものである。これまでの一連の実験において、口腔再現領域全体で5756個のニューロンが記録され、そのうち4579個について受容野の範囲と性質が同定された(3a野:153個、3b野:1765個、1野:973個、2野:1688個)。これらのうち舌に受容野をもつニューロンについて解析した。舌の同側と対側は、3b野では分別的に再現されているが、後方に向かうにつれて両側性受容野をもつニューロンの割合が増加し、同側性受容野をもつニューロンの割合が減少した。また、舌を前後方向に区分し受容野の範囲を比較すると、後方の領野に向かうにつれて、舌の前後方向を広く覆う受容野をもつニューロンの割合が増加した。さらに、舌とその周囲の口腔組織を覆う受容野(複合型受容野)をもつニューロンの割合は、2野で顕著に増加した。これら3種の統合の結果、受容野は第1体性感覚野前方部の3b野から後方の1,2野に向かうにつれて大きく複雑になっていくことが明らかになった(階層的情報処理)。複合型受容野は、機能的に関連する部位、つまり単一の対象物(食物、食塊等)により同時に刺激され得る部位の組み合わせからなる。これらの部位からの感覚入力がひとつのニューロンに収束することは、対象物の立体像を脳内で再構成するために不可欠な、特定の形態的特徴を検出する過程(特徴抽出過程)を反映している可能性が高い。これ以外に、通常の触刺激には反応せず粘膜表面をこする刺激(moving tactile stimuli)に特異的に反応するニューロンも見出されたが、これらの出現頻度は3b野より1、2野のほうが高かった。このようなニューロンは、舌の動きや口腔内の対象物の動きを検出するのに役立っていると考えられた。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Takashi Toda: "Hierarchical somesthetic processing of tongue inputs in the postcentral somatosensory cortex of conscious macaque monkeys"Experimental Brain Research. 147. 243-251 (2002)
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[Publications] Takashi Toda: "Function-directed representation of oral structures in the first somatosensory cortex of conscious macaque monkeys"Neuroscience Research. Suppl.26(in press). (2002)
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[Publications] 戸田孝史: "サル頭頂葉体性感覚皮質の口唇再現領域における統合様式"歯科基礎医学会雑誌. 44. 492 (2002)