2003 Fiscal Year Annual Research Report
口腔内立体認知の神経機構-慢性サル体性感覚皮質における特徴抽出ニューロンの性質-
Project/Area Number |
14771029
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
戸田 孝史 東邦大学, 医学部, 助手 (40250790)
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Keywords | 口腔内立体認知 / 体性感覚皮質 / 特徴抽出過程 / 階層的情報処理 / 複合型受容野 |
Research Abstract |
本研究課題は、慢性サル体性感覚皮質の口腔再現領域から単一ニューロン記録を行い、受容野の性質を領野間で比較することにより、口腔内立体認知に必要な皮質内触覚情報処理機構の解明を目指すものである。これまでの一連の実験において、3b野、1野、2野で得られた約4千個のニューロンの受容野について解析を行なった。口唇を除く口腔組織の同側と対側は、3b野では分別的に再現されているが、後方の1、2野に向かうにつれて両側性受容野をもつニューロンの割合が増加し、同側性受容野をもつニューロンの割合が減少した。また、三叉神経の第2、第3枝の支配領域からの入力の収束についても解析したところ、上下唇、上下顎歯牙、口蓋と舌を受容野に含むニューロンの出現頻度は後方に向かうにつれて増加した。さらに、口腔組織を、口唇、歯・歯肉、頬粘膜、舌、口蓋の5つに区分した場合に、これらのうちの複数の部位にまたがる受容野(複合型受容野)をもつニューロンの割合は、3b、1野と比較して2野で有意に高かった。このように口腔各部位からの感覚入力が単一ニューロンレベルで統合、再現されていることは、対象物の立体像を脳内で再構成するために不可欠な、特定の形態的特徴を検出する過程(特徴抽出過程)を反映している可能性が高い。複合型受容野をもつニューロンの割合を、各口腔組織に関連したニューロン群間で比較したところ、3b、1、2野のいずれにおいても、口蓋、歯・歯肉に関連するニューロン群における複合型受容野の出現頻度は、口唇、舌に関連するニューロン群におけるそれよりも高かった。これは、口唇、舌のような巧緻性に富む筋性の器官では、運動制御の点でそれらの器官に限局した受容野が必要とされるのに対し、口蓋、歯・歯肉は、口唇や舌と協調して対象物を操作する頻度が高いため、複合型受容野が高頻度で形成されるものと解釈された。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Takashi Toda: "Converging patterns of inputs from oral structures in the postcentral somatosensory cortex of conscious macaque monkeys"Experimental Brain Research. in press. (2004)
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[Publications] Takashi Toda: "Hierarchical somesthetic processing of inputs from oral structures in the postcentral somatosensory cortex of conscious macaque monkeys"IBRO World Congress of Neuroscience Abstract. 6. 426 (2003)
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[Publications] Takashi Toda: "The representation of the periodontium in the postcentral somatosensory cortex of conscious macaque monkeys"Neuroscience Research. Suppl.27. S132 (2003)
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[Publications] 戸田孝史: "口腔組織のmoving tactile stimuliに反応するサル頭頂葉体性感覚皮質ニューロン"歯科基礎医学会雑誌. 45. 309 (2003)